対極 ※天喰視点

体育祭後の休みが明けて登校すれば、教室内の空気は落ち着きがなく、クラスメイト達がさんざめいていた。
体育祭での激戦を振り返っている者もいれば、これから発表されるスカウト結果を心待ちにする者もいる。それは、1年生の頃から毎年変わらない風景だ。
ただ今年は、今までには聞いたことのなかった単語が教室を飛び交っていた。


「やっぱり推しは“秘蔵っ子”だな!」

「まあ、可愛いけど・・・我が強そうじゃね?俺は断然、八百万派だわ」

「多少の性格のキツさ 帳消しにするくらいカワイイから、全然アリだろ!」

「“秘蔵っ子”の期待度、高いよなぁ。なんたって超・特例の入学生だし」

「今朝、“秘蔵っ子”が駅ですげぇ人だかりに囲まれてたの見たぜ!」


聞き覚えのない単語に、頭上に「?」を浮かべながらクラスメイト達を見ていると、肩をポンと叩かれ、そちらを振り向く。


「・・・ミリオ、」

「環は、体育祭の1年ステージ、もう見た?」


いつもどおり、明るい笑顔で問うてくる通形ミリオに、天喰がゆるゆると首を振った。
天喰は見ていなかったから知らなかったけれど、察するに・・・噂の“秘蔵っ子”というのは、1年生なのだろう。


「なら、見てみるといいよ!今年の1年生って、すごく元気があって・・・件の“秘蔵っ子”ちゃんも、すごく面白そうな子なんだよね!」


ミリオがそう言うのなら・・・と、勧められるがままに、天喰はその日 帰宅すると、1年生ステージの動画を見ることにした。


『どうせてめーらアレだろ、こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘らず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!ヒーロー科!!1年!!A組だろぉぉ!!?』


プレゼント・マイクの騒がしい実況とともに1年生が入場するのを見て、可哀そうにと、思わず同情した。こんなに持ち上げられてしまっては、自分だったらプレッシャーで足がすくんでいただろう。ただでさえ、大人数に囲まれている状況に緊張してしまうというのに。

けれど―――ふと、1人の生徒が天喰の目にとまった。
カメラが映しているA組の生徒たちの中で、やけに目を引く その生徒は、キラキラと眩しいくらいの笑顔を惜しみなく振りまいている。シャキッとした姿勢で、意志の強い眼差しで前を見据えるその表情は、1年生とは思えぬほど堂々としている。
その女子生徒を見て、天喰はぼんやりと思う。
世の人々が理想とするヒーローというのは、こういう・・・凛々しくて、頼もしい、自信にあふれた人物像なのだろうと。
ただ歩くだけの仕草で、こんなにも眩しいオーラを纏わせるなんて、とても自分と同じ生物には思えない。きっと、生まれながらにして、住まう世界が違う人なんだ。


「(・・・憧れない、わけではないけど・・・)」


彼女のような輝かしい人間になれるとは とても思えない。それでも、羨ましいだなんて憧れてしまう。
通形も彼女に一目を置いているようだったし、彼女が映像に映るシーンがやたら多いこともあり(カメラマンの趣味嗜好だろうか・・・)、気がつけば、天喰の視線は自然と彼女を追うようになっていた。

―――けれど、


『アンタねっ・・・ヒーローなめんなよ!!』


その鬼のような形相で憤る彼女を見て、ヒッと天喰は身をすくめた。
騎馬戦を終えたところで、どうやら彼女と騎手が、口論を始めたらしい。
騎手に対して、全力でやれ、本気で臨めと息巻いている彼女は―――上昇志向に満ち満ちていて、失敗なんか恐れていない様子で、ただ勝利に向かってひた走っている。
きっと、自身の目標のため、邪魔なものがあれば容赦なく排除していくのだろう。障害になるものがあれば、迷いなく踏みつぶしていくのだろう。
彼女にとってはそうすることが自然で、そうしない奴のことも許せず、怒りつける。
そんな彼女の性質が、彼女の言動から伝わってきた。
画面越しに、目を見張って彼女を見ていた天喰、その顔色がみるみる青くなっていく。


「・・・なんて、恐ろしいんだっ・・・!」


震える声で吐きだした。
昔から天喰は、怒られたり、強い口調で言われることが、大の苦手だった。
ひゅっと心臓が縮み、頭が真っ白になり、足の感覚もなくなって、生きた心地がしない。自分という人間が否定され、そんな自分を自分も嫌いたくなるような・・・負の連鎖。
失敗することが怖くて頭が真っ白になるという自分の性質も、根本にあるのは“怒られたくない”という感情のように思う。
とにかく、怒られることが何よりも嫌いなのだ。

そんな天喰にとって、超・特例の入学生だという彼女の怒りは―――画面越しでも震え上がるほど、恐ろしいものだった。
怒られたのは自分ではないと解っているのに、自分の情けない部分を、自分の足りない部分を怒られたように錯覚した天喰は・・・その夜、ものすごく落ち込んだ。

しかし、夜が明けてから、冷静になって考える。
彼女は1年生で、自分は3年生。普通に考えれば、関わる機会なんて ないはずだ。
たとえ学年が同じであっても・・・クラスの中心でキラキラと目立っているような彼女は、教室の隅でひっそりと佇む自分にとって、縁のない存在。
彼女の憤慨する姿がトラウマになりかけているとはいえ―――どうせ、彼女と関わることなんて一生ないのだから、何も恐れる必要はない。







「よろこべ 環ィ!職場体験、身能さんを指名しとったんやけど・・・ウチに来てくれることになったでぇ!」

「・・・なんて、恐ろしいことをっ・・・!」


絶望の色を浮かべた表情で、天喰が震える声で嘆いた。
まさか、自分のインターン先であるファットガム事務所に、彼女が来るとは・・・!恐怖のあまり、頭が真っ白になる。
ファットガムに、彼女と仲良くするよう言われたが、彼女とうまくやれる気がしない。
おそらくだが、天喰という人間がどういう人間なのかを彼女が知れば・・・自分のようなダメ人間は、彼女から叱咤されるに違いない。天喰は、彼女のような強い人間ではないから、きっと彼女の怒りの対象になってしまう。
画面越しでも相当に落ち込んだというのに、面と向かって直接怒られた日には、心臓が縮み上がって、死ぬかもしれない。誇張とかではなく 本気で。


「(かくなる上は・・・できる限り、彼女と関わらないようにするしかない・・・っ!)」


職場体験は一週間。その期間、天喰と彼女が触れ合う機会がなければ、彼女に天喰のダメっぷりが知られることはなく、彼女に怒られることもないだろう。
そうだ、それしかない!
たったの一週間。一週間をどうにかやり過ごせれば・・・彼女との接点がない 平和な学校生活に戻れるはずだ。
だから、一週間はひっそりと過ごして(いつもそうだけど)、彼女と話すことも、顔を合わせることもないようにするんだ・・・!
職場体験後、学校にもどった彼女が「あまじき?誰それ?」と言うくらい、存在感を消すしかないんだ・・・!

そう心に決めた天喰は、事務所にやってきた彼女に向けてクラッカーを鳴らすなんて 恐れ多いこと出来るはずもなく、呆れたようなジト目でファットガムを睨む。
とにかく自分は、彼女の視界に入らないよう尽力して、一週間を切り抜けるのだ。
しかし、世の中、そう思い通りにはいかないもので―――


「私、天喰先輩とも、お話したかったんですよ!雄英のビッグ3と呼ばれるほどの実力者と、同じ事務所で学ぶことができるなんて、光栄です!ここでお会いしたのもご縁ですし、仲良くしてくださいねっ」


画面越しに見ていた時よりも、さらに、キラキラと磨きがかかった眩しい笑顔を向けられ・・・絶望した。
まさか彼女に、自分の存在を認知されていたなんて!しかも“ビッグ3”などと呼ばれていることまでバレている・・・!
これでは、「自分の存在を彼女に気づかれないよう一週間を過ごす」という目標が、さっそく潰えてしまったではないか。

それにしても、ちらりと彼女の笑顔を見て、違和感を覚える。
彼女の浮かべる、あまりに綺麗な笑顔は・・・どうにも、作られたもののように思えてならない。
体育祭中に時おり見せていた笑顔とは異なり、心からの笑みではなく、無理やり張り付けているような、着飾られた笑顔に見える。
これは 油断してはならない―――彼女の笑顔は、偽物だ。彼女の言葉は社交辞令であり、“仲良く”なんて言葉もうわべだけだ。


「(きっと、俺がヘマした瞬間・・・その顔を怒りに歪めて 俺を怒鳴りつけるんだろう・・・)」


その手のひら返しを想像して、すぅっと血の気が引いていく。彼女の笑顔に、天喰はさらに警戒心を高めると、彼女から顔を背けた。
やはり彼女とは、うまくやれる気がしなかった。







「ヒーローはねぇ、凄いんだよ!!」


パトロール中に出会った、ヒーローに憧れる少女に、彼女は胸を張ってそう言い切った。


「そこのお兄ちゃんも・・・本当は凄い人だし、お姉ちゃんもね、めっちゃ凄いよ!ものすごく強いんだから!!」


さりげなく彼女にフォローされ、うっと心臓が苦しくなる。こんな、1年生にフォローされるような情けない人間で、不甲斐ない。
でも、自分に自信をもてない天喰には、大勢の街の人の前で、彼女のように胸を張ることなんて出来なかった。実際、彼女から“凄い人”だと言われるような素晴らしい人間ではないのだ、自分は。


「オールマイトより強い!?」


少女が引き合いに出したヒーローは 偉大すぎる人物で、傍から聞いていた天喰がひゅっと息をのんだ。
彼と比べたら、誰だって“弱い”に決まってる。そんな質問を、よりによってプライドの高そうな彼女に投げるとは、なんて酷な仕打ちだろうかと顔を青ざめさせていると、


「オールマイトもビックリするくらい、強いよ!」

「・・・えっ」


彼女の答えに、ぎょっと目を見開いた。
聞き違いか?だって、おかしいじゃないか。今の彼女の言葉は、誰が聞いたってわかるだろうけど、


「それは、誇張じゃ・・・」


どうしてそんな見え透いた強がりを言うのか理解できず、思わず言葉を発してしまった天喰だが―――彼女からじろりと睨まれ、瞬時に彼女の視線から逃れるようそっぽを向いた。
ああ・・・なんて恐ろしい人なんだ。
けれど、不思議なことに、彼女を見る街の人々の表情には、恐怖心もなければ、不信感も見えない。


「ヒーローは、凄いんだから!なにも不安になることはないよ!大丈ー夫!」


やはり胸を張って言う彼女に、周囲にいた街の人々は・・・安心したような顔になって、彼女に笑顔を向けていた。
その様子に、天喰は怪訝そうに首を傾げる。
天喰からすると、彼女の言葉は楽観的で、その場しのぎの無責任な言葉にも思えるのだが・・・街の人々にとっては、違うのだろうか?
では、彼女自身は、いったいどんな気持ちで言ったのだろうか?なぜ、あんなことを言ったのだろうか?





翌日、電話でクラスメイトと話しているらしい彼女を見かけた。
いつも通り、彼女が自分に気づく前にUターンしてその場を去ろうとしたのだが、ふと、彼女の表情が視界に入った。
これまでに見たことのない、ふわふわと蕩けそうな優しい笑みを彼女は浮かべていた。
作られたような整った笑みしか見たことのない天喰にとって、そんな顔もできるのかと、新たな発見であった。
電話を切ってもなお、上機嫌で微笑んでいる彼女を見て・・・今ならば、彼女とまともに会話をできそうな気がした。
天喰は引き返そうとしていたことを忘れ、かける言葉をさがしながら彼女をじっと見つめた。
ついつい顔が険しくなってしまうが、彼女を前にすると、どうしても顔が強ばってしまうので仕方ない。
しかし、そんな天喰の存在に気づいた彼女は、


「あの、何か・・・?」


優しい笑顔から一変、軽蔑するかのように眉根を寄せられ、ひるむ。けれど、どうにかその場にとどまって、口を開く。


「・・・昨日の・・・君はなぜ、ああいう態度をとるんだ・・・?」


一晩考えても、彼女の言動を理解できなかった。彼女の言動も、それに対する街の人々の反応も、天喰にはとても理解できないものだった。


「あんなに自信満々な態度をとれる君の神経が、計り知れない・・・自分の個性の使い方も、把握できてないのに・・・」


雄英で二年間も個性を伸ばし続けた自分だって、ビッグ3だのなんだのと囃し立てられたって―――自分が“凄い”なんて口が裂けても言えないのに。
だって、そんなことを言っておきながら、失敗したら?負けてしまったらどうなる?
それを考えると、怖くて、不安のあまり頭がズキズキと痛んでくる。
なのに、ファットガムに指摘されるまで個性の使い方もあやふやだった彼女がなぜ、ああも自信にあふれた態度をとれる?


「それに、“大丈夫”だなんて・・・君は、安請け合いしていい立場じゃない。根拠もなにもないのに、無責任に勝手な希望を語って・・・もし叶わなければ、相手はさらに傷つき、君への信用もなくなる・・・」


少し考えればわかることだろうに・・・わかっていないのなら、1年生に教えてあげなくてはいけない。
楽観視した無責任な言葉は、叶わなかったとき、信用を失うことになるのだ。街の人々も、彼女に裏切られたと感じるだろう。


「――そうなれば君も、ヒーローとして、お終いだ・・・!」


彼女を見ていると、どうしたって天喰は不安になってしょうがない。
“自分ならこうするのに”と思うことと、真逆のことをやってのける。“それは止めたほうがいい”と思うことを、やらずにはいられない性分。
そんな彼女の言動はどうにも心臓に悪く、恐ろしくて、悶々と不安ばかりが鬱積していく。


「先輩こそ・・・どうして、そういう態度とるんスか・・・?」


淡々と、感情を抑えたような声で、彼女が吐きだした。


「・・・先輩の態度、ちっともヒーローらしくないです」


彼女からの指摘は、反論なんかできないほどに、的を得たものだった。


「私と、目も合わせようとしませんよねぇ?」


自分の視界に割り込んできた彼女に、緩慢とした動きで視線を向けたが・・・やはり、彼女の威圧的な態度が恐ろしくて、視線を合わすことなく逸らしてしまう。


「・・・ここ数日、いつ見たって そう。びくびく、もじもじ、おどおど―――情けないッスよ!こんな人が雄英の“ビッグ3”だなんて・・・もう、がっかり!」


口調が荒々しくなっていく彼女に、その怒りの言葉を浴びせられている天喰は、心臓がぎゅっと縮み上がるのを感じながら、俯いた。


「・・・見てるこっちが、ムカつくんスよ!!」


―――ああ、だから嫌だったんだ。
こうなることは、最初からわかっていた。天喰という人間の“人となり”を知れば、彼女に叱咤されるに違いないと、わかっていたというのに。


「・・・・・・やっぱり」


天喰は震える声で低くつぶやく。
昔から天喰は、怒られたり、強い口調で言われることが、大の苦手だった。
雄英で二年間も鍛えた今となっても、やっぱり、そこは変わらなかったようで、


「・・・嫌い、だ・・・」


今ならば彼女とまともに会話をできるのでは?そう期待して声をかけてみたものの・・・それは勘違いだった。結果は、大失敗。彼女と接してみて、期待を裏切るような現実に、予想していた以上のダメージをくらう。
天喰が初めから予感していた通り―――彼女とは、うまくやれるはずがない。





天喰と彼女の関係がギスギスしていることに、ファットガムが気づいてないわけがない。
だというのに特に気遣うこともなく、むしろ、二人セットで行動させることが多かった。
どう考えても、パワハラだ・・・!
それでも、インターン実習生も、職場体験生も、ファットガムの指示に逆らう権限はないので・・・大人しくファットガムの言うことをきくしかないのである。


「(大丈夫なんだろうか・・・)」


誘拐された少女を捜して二人で廃工場の中を進みながら、先導している彼女の背中を見て、天喰は口元を引きつらせた。
二人でチームアップしろとファットガムに言われたが・・・二人でまともに会話もできない仲だというのに、無謀じゃないか?
それに、「また彼女に怒られるのでは?」と考えると、緊張と恐怖から、本来の実力を振るえる気がしない。緊張すると存分に実力を発揮できないのは、自他共に認める、天喰の最重要課題であった。
そんな不安を抱えていると―――曲がり角を前にして、彼女が足をとめた。


「・・・誰かいます」


自分だけに聞こえるよう、小さく声を発した彼女。
だが、その声が僅かに震えていることに気づいて、天喰は目を見開いた。よく見れば、彼女の手は固く握りしめられて、指先が白く変色している。
そこで、ようやく気がついた。
体育祭を見てから―――なんとなく、彼女のことを雲の上の存在というか、完璧超人のように思い込んでいた。
しかし、彼女も自分と同じ、ヒーローを目指す学生という身分であったことを思い出す。普段あれだけ自信満々な彼女だって、ヴィランとの戦闘ともなれば、緊張もするし、恐怖もするのだろう。
それに、彼女はまだ1年生だ。であれば、ここは、3年生の自分が前に立たなくては・・・!
―――と、思っていたはずなのだが・・・


「・・・帰りたいッ!!」

「ちょっと、先パアァイ!?」


マスクをしたヴィランの言葉を耳にした瞬間、かつて感じたことがないほどに心が痛んだ。いつもの何倍もの不安と恐怖を感じて、目の前が真っ暗になる。
自分の欠点だけが目について、自分に取り柄なんか無いように思えて。自分という人間の存在価値が見い出せず、なぜ自分が平然と生きているのかがわからなくなってくる。
どうしようもなく死にたくなった瞬間―――天喰の目の前に、彼女がしゃがみ込んだ。
なんだ?怯えながら、彼女の様子を探るよう窺うと、


「・・・毒をもって毒を制す、ってね」


彼女がポケットから取り出した“何か”を・・・スポッと耳に突っ込まれた。同時に、一切の周囲の音が遮断される。


「!?」


いったい何ごとかと動転していると、目の前にいる彼女が、ふわりと笑みをこぼした。
それは、以前にも見た――ふわふわと蕩けそうな優しい笑みだった。それを正面から自分に向けられ、天喰の胸のあたりがポカポカと熱をもつ。
そして彼女は口を開き、何かを呟いた。
耳に突っ込まれた“何か”のせいで正確には聞き取れなかったが・・・“大丈夫”だと、彼女はそう言ったようだった。


「(・・・ああ、そうだったのか)」


知らなかった―――誰かに、笑顔で「大丈夫」と言ってもらえることが、こんなにも心強いことだったなんて。これだけのことで、こんなにも勇気をもらえるだなんて。
彼女の言葉に、根拠なんか無いはずなのに。彼女はまだ、状況を楽観視しているだろうに。
それでも、彼女の言葉はストンと天喰の中に入り込んで・・・大丈夫なんだと、強い気持ちになれた。
マスク男の言葉のせいで傷つけられた心も、今となっては何をくだらないことで悩んでいたのかと、開き直る。
そして、彼女は宣言どおり、マスク男の『毒舌』にも拳銃にも臆することなく、見事にヴィランをぶっ放した。
その背中はなんとも頼もしいもので、まさしくヒーローであった。

勇ましくヴィランを倒したあと、彼女がハッと目蓋を押し上げたかと思うと、慌てたように声を張り上げた。


「先輩!今すぐ乗り込みましょう!」

「(・・・ん!?)」


借りていた耳栓を彼女に返しながら、どこかぼんやりとしていた天喰は、その言葉に反応が遅れた。
今すぐに乗り込むというのは・・・いささか無計画ではないか?中の状況もわからないし、二人でどう戦うかの作戦も練っていないのだから。しかし、


「あ・・・っ」


時すでに遅し。
彼女は、マスク男が見張っていた扉を蹴破って、そのままの勢いで扉の先の倉庫へ飛び込んでいた。
ヴィランの待ち構えるところへ、考えなしに突っ込んでいくなんて・・・自分だったら考えられない大胆な行動に面食らいつつも、天喰は慌てて彼女を追いかけた。

無計画に突入したわりには、案外、二人は健闘できていたように思う。
足がバネのようなヴィランは、彼女が瞬殺した。
空気砲を放つ男も、毒ガスを放つ男も・・・どちらも、大したことはない。天喰の『再現』で充分に応戦可能だった。
これならファットガムに頼るまでもなく、制圧できるだろうとも思えた。
残す一人、マントを身にまとっていた男―――そいつが動きを見せるまでは。


「・・・その男から潰す必要があるな」


男がそう呟いた瞬間に、一本の触手が目にもとまらぬスピードで天喰に向かってきた。そして触手に殴打され、身体が横なぎに飛ばされた。
素早くて、グネグネと不規則で読めない動きとはいえ、いつもなら、この程度の攻撃は容易く防げるのだが―――避難誘導しようとした少女に「そのお兄ちゃんとは行かへん!」と拒絶されたショックを引きずっていたこともあり、天喰の回避行動が遅れたのだ。
すぐに立ち上がろうとするが、身体が麻痺して、コントロールできない。身体を動かそうとする度、全身にビリビリと痺れる感覚が拡がり、身体が張り裂けそうなほどの激痛が走った。


「こいつの個性・・・『毒クラゲ』か!」


彼女の呟きに、天喰も理解する。
かなり毒性の高い、猛毒を食らったらしい。
身動きできない状態で彼女を見やれば・・・彼女は、少女をひとりで逃げるよう促していた。
なるほど、これなら少女を巻き込まずに戦える。

残す敵は、あと三人。
毒ガスを生成する奴と、それを空気砲で飛ばしてくる奴。それから猛毒の触手を素早く自在に動かす奴。
だが、なにも慌てることは無い。勝機なら、必ずくる。天喰には勝ち筋も見えていた。


「・・・毒をもって毒を制す、ってね」


その時、まさに求めていた勝機が訪れる。
彼女の首元に、毒クラゲの触手が巻き付いた。彼女がその触手を握れば、ぶちりと千切れた触手が彼女の首元に残る。


「(それさえ、あれば・・・!)」


彼女も言っていた、毒を以て毒を制すというやつだ。
その触手の切れ端を自分が食べれば・・・毒に対する耐性を獲得して、自分の麻痺状態を回復できるだろう。さらに毒の触手を『再現』すれば、空気砲の男と毒ガスの男を、一斉に戦闘不能にできる。触手の太さを変化させ、極太の触手で締め上げれば、クラゲ男も抵抗できまい。

しかし・・・やはり、そう思い通りにはいかないもので―――彼女は自分の首に巻き付いていた触手の切れ端を、気持ち悪いものを触るように掴むと、ペイッと遠くに投げ捨てた。


「(ああっ、なんてことを・・・!)」


クラゲの猛毒がまわって地面に倒れこむ彼女を見ながら、具合の悪かった天喰の顔色が、さらに青白くなる。
遠くに投げ捨てられた触手は、麻痺した身体で這って取りに行くには・・・遠すぎる。
せっかく訪れた勝機が、こんなにもあっさりと遠のいてしまうなんて。
こうなってしまうと、思い描いていた戦略は難しくなってくる。さて、どうしたものかと考えを巡らしていると―――


「・・・ビッグ3、なんでしょ・・・!?」


その、苛立ちを含んだ声に、びくりと天喰の身体が固まった。


「だったら・・・少しはカッコイイとこ、見せてよ・・・ッ」


すでに青白かった天喰の顔色が、ついに、死人のような土気色になった。
彼女よりも先輩でありながら、先輩らしいカッコイイとこなんて何一つ見せられていない現状は、言われるまでもなくわかっていた。


「ビッグ3なら・・・ヴィラン たったの三人くらい・・・一人で完封してみせてよッ!!」


すでに敗北を見据えてか、涙で目を潤ませている彼女に怒鳴られて―――天喰は、かつてないほどの不快感と、嫌悪感を覚えた。
怒鳴られるのは大嫌いなのだが・・・それ以上に、弱った彼女の涙目なんてものを見るのは、もっとずっと堪えるものがあった。
彼女をそうさせてしまったのが自分だと思うと、あまりの申し訳なさに、胸が苦しくなる。
こんなにも苦い気分をこれ以上 味わっていたら、誇張ではなく本気で・・・自分は死ぬに違いない。
これは 死活問題だ。ただし死因はヴィランではなく、サイドキックである彼女だけど。
だからこそ、天喰は意を決して、彼女に問いかけた。


「あいつらを、完封すれば・・・君は 怒らないのか・・・?」

「完封しなきゃ、怒るッ!!」


それを耳にした瞬間、天喰はキッと目つきを鋭くした。
彼女がそう言うのなら、まだ残っている一縷の望みに賭けてみよう。あまりやりたくはなかった手段だが、彼女が怒らないでくれるのなら、彼女の弱ったところを見ないですむのなら・・・どんなことだって出来そうだ。

毒が回ってうまく動かせない体をずるずると這わせ、彼女のもとまで近寄ると―――彼女の顎を掴み、グイッと顔の向きを変えてそっぽを向かせた。
眼前にある、白くまぶしい首すじに、ごくりと唾をのむ。そして、先ほどまで触手が巻き付いていたと思われる箇所に口を寄せると、かぷりと噛みついた。
ピクリと反応して身を固めた彼女に、なんだか疾しいことをしているような気持ちになるが・・・それでも、「完封しなきゃ怒る」と言って焚きつけたのは君だと、内心で開き直った。
柔らかな彼女の首に舌を這わせ、舌先で、クラゲの毒針と思わしき感触を見つけると、じゅるりと吸い付いた。
ごくりと飲み込んでから、そっと彼女の首すじから口を離し、ムクリと起き上がる。
体調がみるみるうち回復して、万全な状態に戻った天喰は、鋭い眼差しでヴィランたちを見やった。
その様子を訝しんだクラゲ男が、天喰に向けて再び毒の触手を伸ばそうとするが―――


「っもう、遅い・・・!」


思い描いていた勝ち筋のとおり、触手を『再現』して、ヴィランどもを完封した。なんてことはない、一瞬でカタはついた。
ふう、と息を整えて、触手をしゅるしゅると戻していると、


「・・・・・・ど、」

「(・・・・・・ど?)」


小さく声を漏らした彼女に、首を傾げる。
「どうやったのか」と問い詰められるのか。はたまた、「どういうつもりだ」と責められるのか。
いずれにしろ、彼女に怒られてばかりの天喰には、彼女からキツい言葉を投げられる未来しか思い浮かばないが・・・


「ナマ(生意気)言って スンマセンっしたぁ!!」


ガバッとひれ伏すように頭を下げ、渾身の謝罪をする彼女に―――その後頭部をじっと見つめながら、天喰は、ダラダラと冷や汗をかく。


「(え?ええっ!?これは、どういう・・・!?)」

「・・・お!?なんや、ちょっと見てへん間に おもろい上下関係になっとるやん」


聞き慣れたファットガムの声に、困惑顔のまま、勢いよくそちらを振り向いた。このよくわからない急展開を、解説してはくれないだろうかと、縋るように彼を凝視する。
彼は、倉庫内を見渡して状況を把握すると、ニコリと笑みを浮かべた。


「ヴィラン制圧!!ようやったで、二人とも!女の子も無事 警察に保護してもろたし・・・文句なしのチームアップやな!さすがはファットガム事務所のサイドキックや!」


ファットガムの言葉に、無意識のうち、天喰は口を開いていた。


「ファット、そうじゃない・・・」


だって、二人で足りないところを補いあってチームアップしろと言われたのに・・・振り返ってみれば、この事件を解決したのは、ほとんど彼女だったじゃないか。


「ヴィランを制圧したのも、女の子を逃がしたのも・・・身能さんだ」


自分は『毒舌』ごときにやられて、戦力外となっていた。彼女が救けてくれなければ、今頃はどうなっていたことやら。
それに、倉庫に飛び込んだ彼女の行動は“考えなし”のように思えたが―――少女がヴィランの手を離れた一瞬の隙を逃さなかったその行動は、英断であった。もしヴィラン側に少女を人質にとられていたら、攻撃ひとつするにも、こうも簡単には進まなかっただろうから。
そして、少女のことを信じ、ひとりで逃げてもらうという 思いきった選択・・・これも、少女の身の安全を考えれば最善の策であった。
今回、ヴィランを制圧できたのも、少女を無事に保護できたのも―――すべて、彼女の素早い判断と、迷いない決断があったからこそだ。
天喰は、彼女が戦いやすい環境を整えてくれたこそ、戦えただけに過ぎない。


「彼女が頑張ってくれたおかげだ・・・俺は、彼女の足を引っ張ってばかりだっ「それは、ちがう!!」


言い終わるよりも早く、言葉をかぶせられる。


「ヴィランに勝てたのは先輩のおかげです!私があとさき考えずに突っ走らなければ、もっと早く解決できたのに!圧勝できたはずのに・・・!」


必死な表情で天喰を弁護している彼女に、肩をこわばらせた。
彼女は、自分に良い感情を抱いてないと思っていたので、こんな風に、自分をかばうようなことを言ってもらえるとは夢にも思わず、驚いたのだ。
なぜか慌てたように手の甲で口元を押さえている彼女を、信じられないものを見るかのように、こっそり見つめた。


「・・・せやから、文句なしのチームアップなんや」

「「?」」


突拍子もなく嬉しそうにこぼしたファットガムに、天喰も彼女も不思議そうに彼を見やった。


「ジブンら、二人で行動してみて、自分の“足らんとこ”に気づけたやろ?同時に、同じくらい・・・相手の“スゴイとこ”にも気づけたんとちゃう?」


その言葉を聞いて、二人して同時に、複雑そうに顔を歪めた。お互い、思い当たることは大いにあったらしい。
それから、互いの“強み”と“弱み”についてファットガムから指摘され、嫌というほどに反省する。


「二人とも極端に、対極的やんなぁ。環と身能さん、二人足して割ったらちょうどええんちゃう?ジブンの足らんとこが相手の強みで、相手の足らんとこがジブンの強みなんて・・・ホンマ、理想のチームアップや。こないな最高のサイドキック、そうそうおらんで!?」


そうなのだろうか。彼の言葉に、若干の疑問を抱く。
何をとっても優秀で、誰もが憧れを抱くような彼女なら、誰とチームアップしたって うまくやれるんじゃないだろうか。


「いやぁ、しっかし・・・でこぼこコンビの距離は なかなか縮まらんし、ヒヤヒヤしたわ・・・」

「(でこぼこ、コンビ・・・?)」

「二人とも やーっと仲良うなれたみたいで、ファットさん 安心したでぇ!!ホンマ、良かったわぁ」

「(これは・・・仲よくなれたんだろうか・・・?)」


そう言うなり、ファットガムは放置していたヴィランを回収しに行ってしまい、彼女と二人、その場に残された。
ファットガムの言葉に、じわじわと、何とも言えないムズ痒い感覚が芽生えてくる。

“コンビ”だなんて・・・自分とは住む世界が違うとさえ思っていた相手とセットで扱われて、気恥ずかしくなってしまう。
“仲よくなれた”だなんて・・・彼女と関わることなど一生ないと思っていた分、嬉しくて舞い上がってしまう。
それに、“最高のサイドキック”だなんて・・・少しでも彼女を支えられて、彼女の成長に一役買えたなら、自分には分不相応なほどの名誉に思える。


「・・・今回チームを組んでみて、身能さんに対する見方が、変わった」


彼女と出会う前はあんなにも彼女に怯え、彼女と接するのを避けていたというのに。
おかしな話だと自分でも思うが、今は・・・彼女とこうして接せられることを、喜ばしく思っていた。

彼女とチームアップするまで、自信あふれる彼女の態度が理解できず怯えていたけど・・・今はその強気な態度の中に、彼女の魅力を見い出せる。それは、天喰にはない強さだった。
理解できなかった時は、彼女とうまくやれる気がしないと思っていたけれど・・・今なら、彼女と仲良くできるんじゃないかと、期待しているのだ。


「・・・先輩のこと、よく知りもしないで・・・頭ごなしに怒ってしまって、すいませんでした。今は、先輩の凄いところをたくさん知って、私が間違ってたって気づきました。だから、この前の言葉は訂正させてください」


だって、ほら・・・彼女はこうやって、自分の至らぬ点を反省して、謝ることが出来る素直な人なんだ。
それを知らなかった――いや、知ろうとしなかっただけだ。
いざ知ってしまえば、彼女を避けていた日々がもったいなかったとさえ感じる。
彼女を避けるあまり、“嫌われている”と彼女に勘違いさせてしまったことも、申し訳なかったと反省する。


「・・・俺の態度のせいで、君に不快な思いをさせたのは確かだ。それに、俺の方こそ、身能さんのことを全然わかってなかった」


体育祭の動画で彼女を見たときから、彼女という人を“こうだ”と勝手に決めつけていた。
まあ、実際に対面した彼女も・・・ふとした時に顔が険しくなったり、油断したように口調が荒くなることもあって怖かったし、なにより、彼女に怒られるのはかつてないほど恐ろしい経験だったけど・・・


「―――でも、チームを組んで、わかった・・・君がどういう人なのか」


こみ上げてきた感情に、表情筋が緩んでしまう。


「身能さんという人は―――」


なんと言ったらいいのか、どう表現すれば伝わるのか・・・少し難しい。
けど、あの時・・・『毒舌』のマスク男を前にして、“大丈夫”だと笑いかけてくれた彼女に、確かに気付かされたのだ。己が今まで見てきた世界とはまったく違う、新しい世界に。
それと同時に、こう思ったのだ。


「身能さんという人は―――本当は“いい人”なんだ、って」


結局は、彼女という人を勘違いして、天喰が一人でカラ回っていたにすぎない。
思わず へにゃりとした破顔した天喰。
すると、なぜかムッと唇を尖らせた彼女がおもむろに両手を伸ばし・・・天喰の両頬を、ムニッとつまんで引っ張った。


「!?」


目をカッと開いて、驚きのあまり体を固めて警戒する。
両頬をつまんだまま引かれて、俯いていた顔は、強制的に彼女の方へと振り向かされた。


「・・・そういうのは、ちゃんと相手の目を見て話すんですよ、センパイ」


とても近い距離で、互いにじっと見つめ合う。
彼女に、また怒られている―――だというのに、不思議と、今まで感じていたような恐怖はなかった。
きっと、今回の件があって、彼女に無駄に怯えることがなくなったんだ。
だって、彼女が怒るのは、相手のためを思ってのことだとわかったから。彼女に怒られてもそれは“天喰のため”の言葉なんだと気づいたら、そうイヤな気分にもならないというもの。
ふと前触れなく、今度は彼女の顔がへにゃりと緩んだ。


「職場体験―――私、ファットガム事務所に来て、本当に良かった!こうして、先輩と一緒に学ぶことが出来て最高ですっ!」


自分に気を許したような 彼女の表情から、目を逸らせなくなる。


「これからも、仲良くしてくださいね・・・環センパイ!!」


その言葉に頷きながら、じんわりと胸が温かくなった。
自分とはまったく違う、対極的な人。
でも、違うからこそ、対極的だからこそ―――彼女と自分は、ぴたりと噛みあって うまくやれるに違いない。







「本当にっ、ありがとうございましたっ!!」


救いだした少女の母親から涙ながらに感謝され、身能はにこりと微笑んだ。
無事でよかったですと、整った笑みで返す彼女は・・・まさに世の人々が理想とするヒーローだろう。
そんな彼女の腰に少女がひしっと抱きついて、少女の方も涙ながらに声をあげた。


「ウチ、ぜったい・・・お姉ちゃんみたいなヒーローになるっ!」


それを聞いて、身能は驚いたように目を見開くと、へにゃりと はにかんだ。
彼女の嬉しそうな表情を見ながら、今になって気づく。
きっと、彼女が普段みせている綺麗に整った笑顔だって、“偽物”ではないのだろうけど・・・本当に彼女が嬉しい時、心から見せる彼女の笑顔は、へにゃりとか、ふわりとか、そういう擬態語が似合うような緩い表情なんだろう。
天喰としては後者の笑顔の方が好ましいと思うけれど、たぶん、彼女がヒーローとして人々に見せたいと望む顔が、前者なんだ。
その時、身能がちらりと天喰を見たかと思うと、少女に何やらコソコソと耳打ちしているのが見えた。


「?」


身能から何やら言われた少女は、天喰のところにシュバッと俊足で駆けつけると、小さく頭を下げた。


「救けてくれて ありがとうございました!」


そう言って少女は、虚をつかれている天喰にニコっと満面の笑顔を見せた。


「お兄ちゃんもカッコよかったァ!・・・これからも、皆のこと守ってね!」


天喰は目をパチクリとさせて、少女を見つめた。
少女から自分に向けられる確かな“信頼”の感情が伝わり、思わず口元が緩んでしまう。
心がじんわりと温まり、優しい気持ちがこみ上げてくる。


「(守る側と、守られる側の信頼関係、か・・・)」


したり顔で自分を見てくる身能に、視線をうつす。
彼女の言葉や行動は、人を明るく照らしてくれるものばかり。正しく、前向きな道を標すよう、温かな光をあててくれる彼女。


「(まるで、太陽みたいな人だ・・・)」


とはいえ・・・日だまりのような、ぬくい暖かさを与えてくれる通形とは、ちょっと趣が異なる。
直視すれば目がつぶれるほど鮮烈で、触れれば燃えて塵になるほどの灼熱・・・彼女はそんなギラギラとした太陽を思わせた。
彼女のようなまぶしい存在は、天喰が普通に学校生活を送っていれば、まず関わらなかったろう。
彼女を指名したファットガムにひそかに感謝しながら、サンイーターは、太陽のような彼女との出会いも糧にして、また一つ成長するのだった。










==========

互いにすれ違い、勘違いばかりで拗らせてた二人も、蓋をあけてみれば、案外うまくいくもんです。
たぶん、そんな二人にファットさんはやきもきしてたんでしょうね。

そして、警戒心の強い天喰には、うわべの言葉とかうわべの笑顔は通用しないんだろうな。



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