対敵

強子たちが倒壊ゾーンから移動しセントラル広場へと着いて、まず目に入ったのは、脳無と交戦中のオールマイトだった。
脳無に拘束され身動きがとれず、黒霧の個性によって身体を引きちぎられそうになっているオールマイト。傍目に見てもやばいとわかる状況だった。


「オールマイトォ!!!!」


そんな状況で、オールマイトに向かって半泣きで飛び出したのは緑谷だ。
しかし、彼が飛び出した先に―――


「どっけ!邪魔だ!!デク!!」


豪快な爆破とともに登場した爆豪が、黒霧の実体部分を掴み、地面に押さえつけた。
同じタイミングで轟もやってきて、脳無に拘束されたままのオールマイトを氷結でサポートする。


「だあー!!」


切島が死柄木へと殴り掛かるが、その奇襲はかわされてしまった。
その隙をねらい、間髪入れずに強子も死柄木へと掴みかかるが、彼の手のひらが強子の眼前に迫ってきたため、慌てて後方へと飛び退いた。
一歩距離をあけて、彼と向い合うように相対する。その時だった。


「ッ!?」


ぶわりと、気味の悪い感覚が全身をかけめぐる。
なんとも不気味な感覚に、ぞくりと身震いした。

強子の身体が本能的に察知したのだ。こいつは、危険だと。
こいつは他のヴィランとは格が違う。他の雑魚ヴィランと、本質的に異なる存在だ。
悪意の塊のような存在に、強子の中の死に対する恐怖が顔を出す。
恐怖に震えそうになる身体を、両腕で抱えるようにして抑え込んだ。


「・・・お前、」


死柄木は強子を見て、何かに気付いたように眉を寄せた。
なんだ?なんのフラグだ?
なんのフラグでもないかもしれないが、死柄木が強子を見て表情を変えたのは確かだった。
しかし、彼はすぐに強子から視線をはずすと、状況を確認するようにあたりを見まわした。
爆豪によって、出入口となる黒霧は抑えられている。少しでも身動きをとろうものなら、爆豪による爆破はまぬがれない。
脳無は氷漬けにされて動けずにいる。


「攻略された上に全員ほぼ無傷・・・すごいなぁ最近の子供は・・・恥ずかしくなってくるぜ、ヴィラン連合・・・!」


死柄木の得体の知れない不気味さに、強子のこめかみを汗がつたう。
皮膚が粟立つような嫌な感じだ。
人々を守るヒーローになると、戦うことを決意したばかりなのに・・・死柄木を見ているとどうしても、死への恐怖が強子の中で色濃く膨らんでいく。


「脳無、爆発小僧をやっつけろ。出入口の奪還だ」


死柄木の命令に、脳無は凍らされた身体に力を入れて動き出した。凍っていた部分の身体が、無理に動かそうとした衝撃で割れていく。それでも、脳無が動きを止める気配はない。


「身体が割れてるのに・・・動いてる・・・!?」

「皆さがれ!なんだ!?ショック吸収の個性じゃないのか!?」

「別にそれだけとは言ってないだろう」


脳無の個性『超再生』で、割れた身体を瞬時に回復していく。
その信じられないような光景を目の当たりにして固まっていた強子が、はっとする。
死柄木の命令はなんだった?彼は確か「爆発小僧をやっつけろ」と、そう言っていた。


「(爆豪くんが、危ないッ・・・!)」


脳無が足に力を入れるのが見える。
地面を蹴る足をバネのように瞬発力に変えると、脳無が爆豪に向かって、目にも止まらぬスピードで接近する。

強子の視界では、それがスロー再生のように見えていた。
ゆっくりと世界が流れていく中で、視界にとらえる。黒霧に跨っている爆豪へと距離を縮めていく脳無を。
それに反応して、オールマイトも爆豪に元へと向かっているのも見えるが、その表情には、どうにも余裕がない。
それもそのはず。彼はほぼ活動限界に達しているのだ。

こんな状況をスローで見た強子は、考えるよりも先に、その手を伸ばしていた。
右腕を突き出して、爆豪へと伸ばす。
爆豪の背後から、彼の首に腕をまきつけると、羽交い絞めのように彼を力づくで引き寄せた。
脳無が強烈な威力のパンチを繰り出す直前、ほんの一瞬のことであった。


「かっちゃん!!!」


脳無が豪腕を振るってパンチを放つと、ブオッ!と木さえもなぎ倒すような風圧があたりを襲った。
爆豪のいた場所を見て悲痛な声を上げた緑谷が、ふと横を見ると・・・そこに爆豪が、強子に抱きかかえられるかたちで座り込んでいた。


「かっちゃん!?身能さん!!?」


無傷でそこにいた爆豪と、その彼を背後から抱えている強子。二人ともどこか呆けた様子で、地面に尻餅をついていた。
他者の足の間に大人しくおさまっている爆豪という、一見シュールな絵面だが、緑谷はすぐに理解した。


「え、身能さんっ、かっ、かっちゃんを庇ったの!?」


二人のこの体勢は、彼女が爆豪を引き寄せて、あの速い攻撃の軌道から逸らした結果だろう。
あの脳無の攻撃は、とても自分たちの目には追えないくらいのスピードだったというのに。それを視界にとらえただけでなく、そのスピードに反応して、爆豪を救けたということだ。


「すごい・・・!」

「うるせぇよ、黙れカス」


攻撃を外したことに気付いた脳無が、再び爆豪に身体の向きを変えた。
追撃がくる!でも、追撃に備えるには時間が足りない・・・!緑谷も爆豪も強子も、焦りに表情をゆがめた。
絶望的な状況にあきらめかけた瞬間、オールマイトが強子たちを守るように、脳無の前に立ちはだかった。
やはり、トップヒーローはすごい。
彼が目の前にいる。たったそれだけのことで、こんなにも安心できてしまうのだから。
少し心に余裕のできた強子は、胸に抱えている彼へと、背後から声をかけた。


「かっちゃん大丈夫?」

「気安く呼ぶんじゃねぇよ、さっさと放せ」


強子にかっちゃん呼びは許されないらしい。
乱暴に強子の腕を振り払って、すっくと立ちあがると強子から離れてしまった。


「ちぇ・・・ま、いいや。これで貸し借りはチャラね!」

「あァ?なにがだ」

「透明ヴィランから救けてくれた分、これでおあいこでしょ」

「(なんで二人とも、この状況でこんな悠長に会話できるんだ・・・!?)」


凶悪なヴィランを目前にしても、いつもと変わらず勝気な二人に、緑谷は頭を悩ませる。
だが、この二人がいるなら・・・心強い。光明がみえてきた!


「3対6だ」

「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた!脳みそヴィランのスピードも身能さんが反応できる・・・!」

「とんでもねえ奴らだが俺らでオールマイトのサポートすりゃ・・・撃退できる!!」

「ダメだ!!!逃げなさい!」


轟、緑谷、切島と、彼らがヴィランと戦う意思を見せるが、オールマイトからストップがかかる。
プロの本気を見ていろ、と。

では、とくと見せてもらおうか。こんな機会はそうそうない。
いずれは強子が通る予定の道だ。しっかりと目に焼き付け、吸収しよう。

・・・そう、思っていた強子だが、プロの本気をなめていた。
目に焼き付けるどころか、皮膚がビリビリと痺れるほどに、彼の本気が伝わってくる。
それまでに、彼の気迫はすごかった。言葉にはできない、彼の信念のようなものが、叩きつけられるように伝わってくる。


「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!」


オールマイトの100%の力を吸収する脳無。ならばと、彼は己の100%を超える力で敵をねじ伏せよういうのだ。
強子の記憶が正しければ、彼はすでに活動限界を超えているはずだけれど。
それでも、血を吐きながら、全力で戦う姿を間近で見せられて、手に汗を握る。


「ヴィランよ、こんな言葉を知ってるか!?」


プルス・ウルトラ(更に向こうへ)だ。
脳無の腹部に強烈なパンチラッシュを入れ込んで、USJの外まで、天井ドームをつき破ってぶっ飛ばした。

オールマイトの本気に、死柄木や黒霧ももちろん圧倒されていたが、守られる側だった強子たちすら、呼吸を忘れるほどに圧倒されていた。


「さすがだ・・・俺たちの出る幕じゃねぇみたいだな・・・」

「ここは退いた方がいいぜもう。かえって人質とかにされたらやべェし・・・」


オールマイトの圧倒的な力、そして死柄木たちに強気な姿勢を見せている彼を見て、安堵する気持ちもわかる。だが・・・


「(違う・・・あれは、虚勢だ・・・!)」


目を凝らせば、彼の体が小刻みに震えているのが見える。もう、彼の身体は限界を超えているんだ。マッスルフォームを保つことすら厳しいはずだ。
おそらく、緑谷も同じことを考えているのだろう。彼は何かに怯えるような表情で、ぶつぶつと口元を動かしている。彼の呟きから「僕だけが知ってる」なんてワードを聞きとり、確信した。


「主犯格はオールマイトが何とかしてくれる!俺たちは他の連中を救けに・・・」


切島が仕切り、その場を離れようと爆豪も轟も歩き始めたが、強子と緑谷はその場から動かない。
ちらりと、強子は緑谷を横目で盗み見る。
自分だけが知っているオールマイトのピンチを、自分だけでどうにかしようと考えている緑谷に、強子は僅かに苛立ちを覚えた。

まだ個性を使いこなせないくせに、何を考えているんだ。
緑谷が戦えば、彼は高確率で重傷を負ってしまうのに。
緑谷自身に、彼を救えるだけの力がないくせに、考えが高慢なのだ。
すぐ隣に、パワーもスピードも優れた強子という人間がいるのに、頼ろうとか少しは考えないのか?

そんなことを考えている間に、状況が動いた。
増援がくる前にオールマイトを殺そうと躍起になり、死柄木と黒霧がかかってきたのだ。

ここは、強子が助太刀しなくては!
オールマイトの元へ駆け出そうと強子が足に力を入れ―――


「オールマイトから離れろ!」


黒霧の目前に、緑谷が飛び出していた。


「なっ・・・!?」


強子の数十メートルほど先にいる緑谷を見て、あんぐりと口を開ける。
ほんの一瞬前まで、彼は強子の隣にいたはずなのに。この数十メートルを、瞬時に移動したというのか?強子が足を一歩踏み出す時間もなかったのに。彼が跳躍するとこすら、強子には見えなかった。

こんなところで、彼との力量差を、こうも明白に見せつけられるとは。

飛び出した緑谷に死柄木の手が伸びる。
だが、その手は、到着した教師陣(プロヒーロー)によって銃弾を撃ち込まれ、阻まれた。
飯田が大勢の教師を引き連れて戻ってきたのだ。これで、形勢逆転だ。
黒霧と死柄木はゲームオーバーだと悟ったらしい。銃弾の雨をその身に受けながら、13号の手をかいくぐって、ワープゲートの個性で逃亡した。

プロヒーローが集まり、主犯格が去ったことで、強子の緊張がほぐれる。肩の力をぬくと、ため息とともに自然と言葉がこぼれ出た。


「また、負けた・・・」


また緑谷に負けた。
また、個性のスペックで、緑谷に負けた。
個性を使いこなせていない奴に、個性比べで強子は負けたのだ。
その事実が悔しくて強子は歯を食いしばる。
ソフトボール投げの結果だけでなく、人を救うために駆け出すスピードでも負けるなんて、ヒーローとして致命的じゃないか。





生徒は安否確認のためゲート前に集合と指示され、ぞくぞくとクラスメイトが集まってくる中、強子は悶々と考える。
どうすれば緑谷に勝てるだろうか。どうすれば、自身の個性を伸ばすことができるだろうか。


「強子さんっ!」


八百万の呼びかけに思考を止め、声のした方へ振り向くと、


「うわっ」


勢いよく強子に向かって飛び込んできた八百万が、強子を力強く抱きしめた。
一切の加減なく飛びかかってきたので、身体のあちこちに痛みが走ったが、倒れないようどうにか踏みとどまって彼女を支える。


「も、百ちゃん・・・?」


ぎゅっと強子の首にしがみついたままの彼女へ、恐るおそる声をかけた。
しかし、反応はない。
彼女らしからぬ行動に戸惑う。さらに、今は彼女の顔色が見えないので、余計に何を考えているのかがわからないし。
助けを求めるようにあたりを見回すが、クラスメイト達も同様、彼女の不可解な行動に首をかしげている。彼女と行動を共にしていた耳郎を見ても、肩をすくめられるだけだ。
困ってもう一度彼女へと視線を戻すと、彼女の身体のあちこちが汚れていることに気付く。
考えてみれば、強子だけでなく、このクラスの誰もが生死をかけて戦っていたのだ。恐怖に抗い、ヒーローとしての使命を果たそうと努めていたのだ。


「百ちゃん、大丈夫?怪我とかしてない?」


八百万をいたわるよう、彼女の頭をなでながら優しく問う。
すると、彼女の肩がピクリと震えた。


「・・・それは、」

「うん?」

「私のセリフですわッ!!」

「えええ!?」


勢いよく強子から離れると、強子の肩を掴んでぐいぐいと揺さぶってくる。


「私、本っ当に心配しましたのよ!?ワープで飛ばされる前、強子さんの様子がおかしかったんですもの!顔色が優れず、私の呼びかけに応じず、意識も朦朧としているようでしたし・・・!!」


黒霧に飛ばされる前、確かに強子はヴィランに対する恐怖で尋常ではない様子だったかもしれない。


「大丈夫でしたの!?」

「だ、大丈夫、だいじょーぶ!」


異様に心配してくる八百万に苦笑で応えるが、彼女は納得していない。
さらに、騒ぎを聞きつけた飯田も駆けつけてきた。嫌な予感にげ、と強子が顔を歪める。


「身能くん!君につらい思いをさせてすまなかった・・・!やはり、君を置いてUSJを離れるべきじゃなかった!くっ・・・!!」

「いや、飯田くんの行動は必要なものだったでしょうが!っていうか大丈夫って言ってんじゃん!」

「本当に大丈夫なんですの?具合は?お怪我は?ワープで強子さんはどこに飛ばされたんですか?いえ、それより、飛ばされた先ではどなたとご一緒でしたの?」

「ええと、」


ぐいぐいと前のめりに質問攻めにしてくる八百万に、強子はのけぞりながら、つい正直に答えてしまった。


「倒壊ゾーンで・・・切島くんと、爆豪くんだけど・・・」


そう答えると、八百万は二人に勢いよく視線をやった。


「お二人とも!強子さんに問題はありませんでしたか!?本人は大丈夫と言っていますが、ヴィランを相手に、何事もなかったのでしょうか!?」

「そうだ!身能くんに何か少しでも異変があったなら教えてくれないか!?」


強子はどれだけ信用ないのか・・・八百万に続いて、飯田までも必死な様子で問いただしている。
問われた彼らは、ちらりと強子を見た。強子は冷や汗を流しながら、懇願するように二人を見返す。

倒壊ゾーンで共に戦った彼らには、強子の『大丈夫ではない』姿を見られている。強子の行動に問題があったことも、彼女に起きた異変も知られている。
でもそれは、できることなら、誰にも知られたくなかったことだ。
クラスメイトが集まるこの場で、あの話を、口にしてほしくはない。
たとえ、クラスメイトの身を案じる委員長と副委員長からの問いとはいえ、本当のことを言わないでほしい。


「え、えーと・・・」


目線をそらし、慎重に言葉を選んでいる切島。
・・・頼む!うまいこと誤魔化してくれ!!


「そいつが大丈夫っつってんなら、大丈夫なんだろ」

「!」


さくっと淡白に言い放ったのは、爆豪だった。
それだけ言って、忌々しそうにケッと吐き捨ててそっぽを向く。


「ま、そうだな・・・たいしたケガもなかったし、平気だったぜ!身能のおかげで助かった場面もあったくらいだ」

「切島くん・・・!」


二人を安心させるように笑顔で答えた切島に、強子は胸をおさえる。
本当になんていい人なんだ!
強子の失態を言いふらさず、八百万と飯田を安心させ、その上強子の株をあげるようなことまで言ってくれるなんて。
強子の失態を言わなかったという点では、爆豪もだ。あいつはいやな奴だけど、なんだかんだ言っても、無意味に人の嫌がることをする奴ではないのだろう・・・多分。


「そうでしたか・・・お二人とも、ありがとうございます」

「ああ、何もなかったようで安心した」


安堵したようで、肩の力をぬく二人。


「もー!心配症だなぁ!私の個性なら、あんなチンピラ同然のヴィランなんて楽勝だよぉ!そんな心配しないでってば!」


ニヤリと笑みをつくって八百万の肩をたたいて、飯田にも視線を投げる。
これを機に、八百万も飯田も、強子に過保護になるのをやめてもらおうか。


「知ってますわ、そんなこと」

「・・・え?」

「強子さんが強いことは知っています。だからこそ、あなたが心配なんです!」


八百万の言葉の意味がわからず、目をつり上げて話す彼女をぽかんと見つめる。


「強さゆえに、あなたは慢心しがちです。それに、予期せぬことが起こると冷静さを欠くきらいがありますわ。他者に負けたり、罵られたり、思い通りにならないことがあると動揺して、判断力を欠いて問題を起こすあなたを・・・心配するなという方が無理でしょう」


それは、たとえば・・・ヴィランなんかに負けるはずないと高を括っていたら、予期せず前世の恐怖をぶり返して、戦意を喪失したことが該当するだろうか。
切島を心配させ、爆豪を怒らせたことは記憶に新しい。


「確かに、八百万くんの言う通りだ。それから君は上ばかりを見て、足元をおろそかにする傾向がある。実力が上の相手には、警戒を怠らずに全力で臨むが、そうでない相手は歯牙にもかけないだろう?すぐに油断する君を見ていると“危なっかしい”と感じるな」


飯田の指摘に、表情を固くさせる。
それはたとえば・・・個性を使いこなせていない緑谷が、自分を出し抜くことなんてあり得ないと見下していたことが該当するだろうか。
彼に出し抜かれたことに度肝をぬいたことも、強子の記憶に新しい。

八百万と飯田、二人からの言葉。どちらも図星であった。
思い起こせば、入学してからは毎日そんなことばかりだったような気もする。
あまりに的確に自分のダメな部分を指摘され、正直めちゃくちゃへこむ。
それにしても、入学してから数日だというのに、ここまで自分という人間を分析されているとは思わなかった。


「私、私は・・・強子さんの、一番の友人ですわ!!あなたの優れた部分も、至らない部分も、よく知っています!友人ですもの!ですからあなたを案じるんです!心配くらい、させて下さい!!」

「!」


彼女の言葉に、目を見張る。


「俺だって、身能くんを気に掛けるのは“委員長として”ではなく君の“友として”だということを言っておこう。友として、危うい君を心配するんだ!俺は、俺を信頼してくれた君を信頼しているんだ!」


彼の言葉にも、予想外の衝撃を受ける。
二人の強子に対する想いを初めて知り、感情を揺さぶられた。
真面目で正直な二人だ。偽りや、綺麗な言葉で飾ったものではなく、二人の本心からの言葉なのだとわかる。


「二人ともっ!」

「「!」」


嬉しさが振りきれ、強子は堪えきれず二人をぎゅっと力強く抱き寄せた。


「言わせてもらうけど、冷静さを欠いてるのは百ちゃんの方だよッ!飯田くんだって、君の発言が危なっかしいからねッ!二人ともキャラ崩壊してて、私の方が心配だっての!!」


こそばゆい感情を誤魔化すよう二人に小言を返すが、そんな強子の口角はあがって、嬉しそうに破顔している。
二人からの過剰な気遣いが鬱陶しいと感じたこともあったけれど、今はもうそんな風には感じない。大切な二人の友からの気遣いだ。今なら、素直に受け取れる。


「・・・本当はね、すごく怖かったよ」


二人にだけ聞こえるように告げると、抱きしめていた二人からそっと離れる。
そして、気恥ずかしそうに笑みを二人へ向ける。


「でも、もう大丈夫だから!その・・・二人とも、心配してくれて、ありがとう!」


雑魚ヴィランだけではなく、ヴィラン連合の主犯格らとも対敵した。ヴィランの真の恐ろしさを体感した。そんな中で、二人が案じるような危ういシーンもあった。
でも、自分の目指すべきゴールはわかったから。もう恐怖に負けることはないだろう。
それに、自分の至らない部分は、友人たちから指摘をもらえるから。一つずつ克服していこう。
だから、大丈夫。

とりあえず目下の課題は、二人を心配させないような立派な人格者になることとしようか。










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結果、二人の過保護っぷりが加速しました。


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