無題(4/37)
短時間でできたのは二日酔いの迷惑なやろーにあわせて、お粥を作ったから。
冷凍にしてたごはんを解凍して鍋で卵と味付けだけ。昼にはちゃんと食堂で食うし二人に奢ってもらうつもりだから昼までに空腹になっても多少我慢だ。
「ほら座れー…って、伊神」
いや犬飼も。
すでに椅子に座って待機している2人をみてコメカミがひくりとした。
「遅ぇ、頭痛い」
「お腹空いたあ〜頭痛い」
「頭痛いなら寝てたらどうっすか」
寝てたら食えねえだろあほか、そう言って伊神は運んできた土鍋を開ける。
犬飼もすかさずお椀におかゆをよそってるあたり、さっきの死にそうな二日酔いが演技だったのかとも思うが。この場にいると二人の顔が真っ青なのがわかりなんとも言い難い。
椅子を引いて犬飼のとなりに座ると、伊神が「はい」と自分の茶碗を俺につきだす。
入れろってか。
仕方なく俺も自分の茶碗と一緒に伊神の茶碗を犬飼にわたした。
「おれ病人!」
二日酔いは病気じゃありません。
涙目になりながら真紫な唇を尖らせる犬飼は素直に茶碗におかゆを入れ出したから、なんだかんだイイ子だと思った。
「んー…んんん、」
痛い。
1限目から体育で伊神は頭痛なのにやってられっかと、遅刻してくるらしい。
その点なぜ二日酔いの犬飼は体育しようとしてるのか。まあもう着替えにかかってるし出来そうなら俺は止めないけど、つーか、それより俺の身体が痛い。何これ成長期かな。体操服に袖を通して確認するように肩をまわす。
「どうした真崎」
今朝あげたミネラルウォーターを飲みながら犬飼が問ってきたから、飲む前に体操服着ろよとも思ったが自分のことが先だ。
「動かすと身体が痛い…」
「おまえ誰かとヤっ…ぐふう!!」
「汚ねえな」
飲みきってなかった水を噴き出した犬飼にこれでもかってくらい蔑んだ顔をしてやると、違え!俺じゃないと否定して後ろを向く。
つられるようにおれも犬飼の後ろをみると、ふわっふわな薄色を揺らした鳳が立っていた。鳳誠也(おおとりせいや)は学級委員長で才色兼備、まさに模範生だ。
「おはよう、真崎」
「はよ」
目を細めるようにして笑うと、向こうも眼鏡の奥の瞳を細めた。
「あんこるぁ、鳳ぃ、テメ俺の横腹殴っといて真崎だけに挨拶か!」
横腹殴られたんだ犬飼。
ああだから水を噴き出したんだな、犬飼がまだ着てない体操服で腕を拭う。
「犬飼が変なこというからだろう」
「変?真崎が身体が痛いつったんだぞ、運動しない真崎が。なら必然的にそれで、っいだ!!」
「真崎が痛がってたのは肩だ。肩回してただろノータリンが!」
「あそーいや俺昨日運動したわ」
ボーリング、ほんの数回しか投げてねえけどしたな。
あれだ犬飼の言う通りあんま運動しないから軽度の運動で筋肉痛になってしまったんだろう。少しずつでも筋トレはじめようか本気で悩む。運が良いのか悪いのか骨太家系なもんで、ひょろっこいイメージはないだろう。面倒だからいいかなとか……怠け癖って大変。
「早く上着ろ犬飼、はじまるぞ」
ひそかに水を拭った犬飼の体操服を押し付けるときに、犬飼の腹筋をみてハッとした。
わ、割れてやがる…。
やっぱり男は鍛えるべきだと思う。
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