無題(12/21)
保健室に替えのシャツを貰いにいった有栖は、ゴミ水ついてなかったら抱き締めるのにとか訳分からないこと言っていたので無視した。
いっとくけど俺は富由の童貞を守る義務もあるしな。
「とりあえずさ、良い方法思い浮かんだよ」
いきなり楽しそうな隊長の声がしたと思いきや、どこかに電話し出したので良い予感はしない。
でもどんよりしてるのも変かなと思い、随分晴れた気持ちを往復しながら破顔させた。独りだと思ってたから、凄く幸せが染み渡る。
「ー…とお待たせ、何、良いことでもあった顔だね」
「あったじゃないすか」
「そう?」
「隊長が居てくれてる」
「……え」
「俺は誰かと居ないと、駄目な人間だから」
富由とは違うから。
誰かに富由じゃないと気づいてもらえて良かった。
が、いや、待て待て待て自分はなんて恥ずかしく女々しいことを言っているんだ。これは電波でしか流しちゃいけないような内容だ男としてやっぱり訂正しよう。
「隊長今のはー…なぜ携帯がこちらを向いてる」
「ムービー撮ってんの。ああ可愛いなあ弧夏はうさちゃんか!ってね」
「うわああああぁぁ消せ!まじで消して!」
「待ってうさちゃん、まだ保存してないから!!」
「いや消せってばああ富由の赤っ恥になるだろ!」
「ううん弧夏のだよ」
「うわこいつ」
「先輩だよ」
「うわこの方なにを」
騒ぎ疲れたときには2人とも酸欠で、隊長の“良いこと”がちゃんと伝わってなかった。
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