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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 無題(11/21)



「ねえ気になってたんだけどさ」


撫でていた手をがしりと掴まれ、そういえば隊長が居たんだと目が冴える。
転校生もそれは同じらしく、隊長を見ながらハッとしたようにするから可笑しくて吹き出す。


「こら、良い雰囲気創らないの。
愛ノ馬君、きみさ、さっきから『富由を』とか『富由の』とか誰のことを言っていたの?」


ぱちりと、目が開く。


「何言ってんの、自分だよ」

「違う、違うなあ。愛ノ馬君、正直に話してほしいんだよ。あまりに可笑しすぎる。愛ノ馬君なら柊様に気に入られてるひとを何がなんでも蹴落とすよ。それを多目に見ても、君はその人を助けた。
ただでさえゴミ水だと見てわかるのに自分のカーディガンを躊躇なくかけるし、着てるシャツで拭く。終いには『富由の友達になってやって』?あきらかに、可笑しいよね」


確かに、あり得ないかもしれないけど…現実的に俺に起こってることのほうがあり得ない。


「言えない、なあ」

「どうして」

「宇宙人に拐われた俺の言葉をだれが信じるんだ、あほらしくなるぞ」

「いいよ、お前は嘘付かない」

「……っ」

「そうだな、わかんないけど俺もさっき信じるって言ったばっかだし聞きたい!」

「お前は面白がっててやだ」


転校生を素早く切り離すと心底驚きましたという顔で反論されるけど、この際無視だ。
真面目に隊長と向き合えば「教えてくれる?」といつもの笑顔で言われ、ここで言って馬鹿にされればそれまで、数日前までと同じように挨拶だけの仲になればいいのだと覚悟を決める。

キリッと痛んだら胃を押さえながら、転校生が聞いてても構わないか…と思って口を開いた。


「俺、本当は宏江弧夏って言います」


久しぶりに誰かに名乗った名前は、自分のものじゃないような違和感があり、なんとなく笑って見せる。
2人は少し不思議そうに俺をみつめて、弧夏君…ねと名前を往復させてくれた。


「でも身体は心証証明、富由のもの。だから富由なんだ」


ぺたぺたと頬や腕を触って、自覚する。
俺はもっと背があるし、筋肉も少しはあったし、なにより富由みたく可愛い顔はしてないんだ。平凡、そんなフレーズをよく友達に言われむくれるか笑っていた。


「えっと、じゃあ弧夏君の身体は?」

「分からない、てゆかもう無いと思います。俺はバナナで滑って亡くなった男っすから」


車に、なんて衝撃ではなく何かに、ああいやバナナに滑らされて頭を強打して亡くなった男ですから。
バナナに…と思ったより真面目に聞いてくれてる転校生。


「そういえば、転校生は名前なんていったかな」

「むかつく」

「うわごめん」

「タイミング悪い。雨宮有栖(あまみやありす)」


アリス!

正直そこを気にせずにいられなかったけど、雨宮なと納得すると「有栖」が良いというのでそうさせてもらうことにする。
有栖は悩ましげに目を伏せ、カーディガンの袖を気にするからちょっと恥ずかしくなった。袖を伸びすぎだよな、あああ。


「ところでさ、弧夏君はここの生徒だった?知り合いは?」

「違うっすよ、だから未だに慣れない。え、英次としか移動しなかったから…か、わかんないすけど、たまに迷子になるし。富由ってば周り見なさすぎて友達いなくて、俺話す人もいないから今初めて相談できたし」

「ああ可愛い」

「有栖君黙っててね」

「はいすいません」


可愛いって男にそれは無いと言いたいが、これがびっくり富由は黙ってりゃ可愛い顔だと俺も鏡見て思った。


「そっか、とりあえず、気付くの遅れてごめんな。僕が冷たくしたから、話し掛けづらかったろ」


心配そうに見てくるかと思いきや頭を撫でられ、目を見開くと貼り付けじゃなく綺麗に微笑まれる。


「た、隊長…」

「冷たくしてたんだ」

「煩い有栖君、僕は愛ノ馬君が苦手なんだよ」

「苦手にならないでやってくださいただの馬鹿一途なんで」

「わかるの?」

「わかりました」


俺ももっと早く気付いてやれば良かった。
そしたらもっと、もっともっと色々考えてたかもしれない。まあ今更だ。これからのことを考えよう。


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