×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
 


 無題(3/21)







「愛ノ馬、おまえ何派か決めたか」


隣の席の不良にうなづく。


「俺はトランクス派だな」

「ああそう―…いや違うなんの話してんのお前」


アホだろ。なんて赤茶けた少し短めの髪をがしがしかいた不良は、これみよがしにプリントを付き出してきた。

……体育祭の団の分けについて?


「なんだそれ」

「ああ?てめ、体育館で話聞いてなかったのかよ」

「ああ正確な意識は無かったから」

「……」


普通に寝てたと言ったらどうなんだ。

など不良、こと三谷原和敏(みやはらかずと)が思ってるなど露知らず。
興味深そうにこちらのプリントを覗き込んでくる富由にハッとする。


「お、お前のプリントちゃんと机にあんだろーが!」


頭を押し返すと「ふぐ、」と空気の抜けたような声をだす富由は、和敏に少なからず違和感を与えた。

いつもいつも柊幸明(ひいらぎさちあき)のことを語り、色んな意味で盲目になりながら影で柊信者に嫌がらせをしていたと悪名高い富由。
それはあまり教室に来ない和敏の耳にも入っており、隣の席になったときは面倒臭い、気分が悪いとすら感じていたのだが。実際どうだろう。


「自分の入りたい団を書くなんて、面白いなあ。それぞれ生徒会の人が団長なのか…」

「柊んとこだろ」

「……ああそうだな」


面白いと言っていた口は、つまらなさそうに閉じられた。

何故?柊が好きなはずなのに、同じ団に入れて嬉しいはずなのに何故喜ばない。

和敏が憶測で出した答えは

“愛ノ馬富由は柊幸明に飽きてしまった”
が妥当ではあるが、何か違う気がする。こんなにあっさり興醒めすることは別に不思議じゃないが、問題は性格だ。噂で聞いてた富由は確かに影での嫌がらせをするが、通常もそれなりの高飛車なはず。

それが欠片も見当たらないのだ。



「絶対これ生徒会長の団すげぇよなあ。勝てるかな、負け試合なんて俺ヤダぜ」

「……意外と真面目だな」

「まじめ?もなにも、理不尽だっての。だいたい何で急に縦割りじゃなくなったんだ?もしかして」


転校生絡み?

だろうな、と富由に同調する前に和敏はなんとなく思ったこと。


こいつお喋りだわ。













「なあ白菊どう思うよ」

「……転校生争いに決まってる」



配布されたプリントに書かれた生徒会メンバー4人の団と、どこにも属したくない人の団。計5つの団で、もちろん白菊春(しらぎくしゅん)は自身が隊長を務める柊幸明様の団を記入する。
漆黒の髪に清涼感のある整った顔、そして秀才で繊細な空気をかもちだす白菊は、彼自信にも個別な親衛隊ができている。だからこそ誰も、柊親衛隊のだれもが自分には逆らえない。影でこそこそやられては証拠がなく口も挟めないのが難点だ。富由や英次のように。


「転校生、ねえ…」


面倒臭そうに足を組む男もまた親衛隊で、副隊長の神崎侑都(かんざきゆうと)。
オレンジに近い茶髪をピンでねじあげ、可愛らしい外見に加えて雄々しい性格。侑都もまた自他共に認め人気がある。

実をいえば隊長、副隊長、会計、書記と親衛隊のなかで役割につく人物はだいたいが整った顔をしている。
柊様に親衛隊で一番近い存在であるから、容姿は多少でもいいほうがやっかみも無いだろうと決まったのは、きっと自然現象だ。書記の富由も、見た目だけは可愛らしいほうに部類される。


「今回の団を生徒会がひとつづつ担当するのも、どうせ転校生の奪い合いみたいなもんだ。
勝ったらどうとか、そんな感じ。ったく…学校行事まで巻き込むなんてどうかしてやがる」


侑都の言葉に春はしかたないという笑みで、携帯を開いた。


「それにこんなあからさまに転校生贔屓したら、制裁の時期も早まるってわかっててしてんのかあいつら」

「そうだねー…そろそろ手が出ても可笑しくないはずなんだけど」


メールはこない。

自分の親衛隊に頼み、富由を重点的に見張って嫌がらせを今度こそ証拠として留めようとしたのだが。
それらしき動きもないのか電話もメールも一切無しだ。

ばちん、携帯を閉じ、照れながら団のプリントを集めにきた生徒へにっこりと手渡す春。それに続き「宜しく」と一言吐き捨てプリントをわたした侑都は、そういえばなんて話を切り出す。



「愛ノ馬の言動、おかしくないか」




prev next

しおり