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カイドウからしたら、今一番オフ会に来てもらいたい人物だろう。
じぶんのグルにありすちゃんが居るということだけでも、結構自慢している彼は本当に周りからの自分の評価が大事らしい。ランカーを従える、俺、的な。
まあ良いけど。
弱いくせに怠けて、強い人にクエスト連れて行ってもらうために媚びうるだけのやつよりは欲望に忠実で、行動力があって尊敬する。
『とみりとすーちゃんは行くっぽいね』
え……まじか。
驚いて返信する手が止まる。
『そもそも、すーちゃんととみりってリア友でしょ?』
《そうなんだ》
『らしいよ、高校一緒だったんだって』
あのふたりとは、カイドウのグルじゃないところで一緒だからカイドウのグルに居たこと忘れてた。
アイパッドを手繰り寄せてゲームをひらく。アイフォンでもアイパッドでも開けるようにしてあるので今日はアイフォンはありすちゃんとの会話用だ。
ゲームを開いてすぐ飛んでくるダイレクトチャットに目を見開いたら、ありすちゃんだった。
《わたしと会話中にインしたな!》
口で言えばいいのに、ていうか、ありすちゃんなんてとっくの前にインしてたんじゃないか。
微笑ましいダイレクトに返していると、またダイレクトが届いたみたいで誰からだろうと開く。カイドウ。早いな。
《12月28日、忘年会予定だ》
だからどうした。なんて無粋なことは聞かない。
《ゆゆはその日実家に帰っています》
適当な断りであしらう。
《ちなみに今回はとみりとSUKE、真宙もくるぞ》
まひろ。と名前をあげられたのは今ゲーム内で総合ランキング一位の座を譲らない最強ランカー。とみりさんに助さんが来るのも本当なのか。
さすがにまじか、と驚きはしたが、そうやって有名どころを使って釣ってくるところも嫌だ。さらに行く気が失せた。
あきれてありすちゃんに今来たダイレクトの話をすると、俺も今その話されてるというからカイドウのマメさに感心するしかない。
『すーちゃんととみり、みてみたいなあ』
呟かれたことばに、行けば?と打ち込む。
『いやいやいや…まだネカマばれるわけにはいきませんから』
ありすちゃんにガチで惚れてるランカー達が阿鼻叫喚するのが目に浮かぶ。
そもそも信じてもらえないんじゃないだろうか、何年も可愛い女の子貫いて、ツイッターのアイコンも元カノ使ってまじで女の子としか思えなかった。
まあ、その点でいえば俺も何年も女で通してるわけだけど…。
『まあ、ゆゆちゃんが行くって言うならばれてでも行くかな』
いじわるく言われた言葉に、くすりと笑いが零れた。
《じゃあしばらくは、ばれないね》
ありすちゃんにすら、男だとカミングアウトする日は来ないのかな。なんとなくそれは寂しい気がした。
まあ、ある程度したら話そうと思う。
「西野さん」
つんと突かれて、表の看板を書き直してた手を止める。
わがカフェバー自慢の爽やかバイトが制服で立っている。最近私服でくることが多かったから、久々の学ランにそういえば高校生だったなあと思い出す。
チョークを看板に走らせながら、おはよ。と業務挨拶する。
「おはようごさいます。今日のパスタおれの好きなものばっか」
「お前食えないけどな」
ですよね。なんて台詞も爽やかに言うと、学ランを着替えに行った。
受験する学年で、いまは受験シーズンだというのにバイトはしっかり入っているのだから、たまに心配になる。
学生の本分なんて遊びだからバイト頑張りすぎずに遊んだほうがいいのに。大人になったらどうせ嫌というほど仕事するんだ、しなくて良い時に甘えておけば良い。そうは思えど、家庭事情は人それぞれだろうし深くは踏み込まないようにしてる。
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