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料理を出し終えると、キッチンからその2人を眺める。
そんな俺に爽やかバイトが「美人でもきましたか?」とホールをのぞく。


「いや、なんでもない。てか勉強終わったの?」

「休憩です」


叔父から貰ったらしい甘ったるそうなマキアートを見せてくる。
最近カフェアートにハマってるらしい叔父の趣味ついでに入れたものだろう、キャラメルも入っているのか匂いが甘い。

さりげなく差し出してくるから、一口だけ貰う。


「あま」

「おれには丁度いいですけど」


くすくす笑うこいつは、ブラックコーヒーが苦くて飲めないと前に言っていた。おれも、高校の時はそうだったかもしれない。そもそも珈琲なんて飲む機会があまりなかったかも。


「入試いつなの?」

「センター入試は1月13日です」

「センター…って、国公立受けるんだっけ」

「国立です」


爽やかバイトはてっきり勉強よりスポーツ派だと思っていたが、思ったより賢いのかも。

すごいな〜なんて、こんな時期までバイトに来てるのを考えると余裕があるようで感心する。センター入試ってそんなに簡単じゃないと思うんだけど、しかも国立だろ?名前だけでも真面目そう。


「西野さんて大学詳しい人ですか?」

「詳しくない。キッチンの谷やんのほうが詳しいよ」


谷崎さん意外だ、なんていう爽やかバイトに「失礼だな!」なんて声が飛んで来たから、この会話は丸聞こえだったんだろう。
叔父にも聞こえてるだろうし、怒られないうちに仕事に戻ろう。








『大学〜?』


今日は助さんしか居ないのか。
たった2人じゃ強化素材集めくらいしかやることなくてさっきから同じ敵を永遠と倒し続けてる。


『ごめんわかんねぇわ!俺馬鹿だから』

《ゆゆも〜》

『ゆゆが馬鹿なのは生まれつきだろ?』


この野郎。

冗談だって、とすぐ訂正する助さんを無視して、今まで倒してあげてた敵を攻撃することをやめる。
焦ったように敵を倒す助さんに『おい!』なんて怒られるが、そもそもずっと俺に倒させるなんて周回サボりすぎ!


《もう許しませんあと助さんが倒して》

『怒んなって。シワが増えるぞ』

《それは困る〜!》


そんな歳が離れてないんだけどな。

助さんは26かそこらへんで、俺が24。どちらかと言うと俺の方が若いのでシワの話はやめてくれ。まあ、俺の歳すら知らないんだろうけど。


『てか、大学といえばカイドウグルの天下人が今年受験とかで活動休止してるよな』


てんかびと、なんて読み方に困る名前のプレイヤーは高校生にしてお小遣いを課金に回してる少年だ。古参だし微課金てことでそこそこに強い。何より賢いのか立ち回りが上手くて、パテには引っ張りだこ。
ランカーグルでは学生なんてほぼ居ないため、みんなに可愛がられている。


《天下さん最近見ないなと思ったら、そうだったんだ》


天下人が長いので、天下。
確か歴史が好きだからつけた名前だとか言ってたな。


『天下が復帰する頃には大学生かぁ。カイドウが目をつけるだろうな』

《なんで?》

『天下めっちゃ賢い大学行くみたいだし』


今時の子は勉強となにかを並行してできるこが多いのか。

いまは活動休止とはいえ、つい最近までゲームしていたというのに勉強もできるなんて凄い。

ネトゲは人を駄目にすると言われがちだが、それは1日何十時間とインしっぱなしの人だけだと思う。ありすちゃんとかね。


《それより今度のアプデ、新イベくるんだっけ?》

『あー来るかな。てことは、新ガチャかあ……今回はどんだけ金積むかな』

《無課金で引こう》


必ずと言っていいほど新武器は手に入れる助さんに、そんなことは無理だとわかっているけど。

むかし、ガチャを引く時たまたまパテ組んだままでガチャの実況をされた時は驚いた。はずれ、はずれ、はずれ、と高価なガチャを淡々と引いてゴミ武器を増やす。その運の無さにも驚いたが、何よりも回せなくなったらすぐクレジットで課金して出るまで回すという荒技にでたのだ。
あの時は必死に止めたけど、とみりさんいわくいつもの事だとか。助さん家は両親兄弟そろって起業していてとにかく金持ちらしい。兄弟全員いま海外にいるときいたときは、嘘かと思ったがたまに話す企業の話があまりにリアルで。あと課金額がほんとに桁違いだから最近は助さんが金持ちのこと信じかけている。

ネトゲの住民は個人情報がわからないのをいい事に、自分のことを誇張したり偽装する。

だから、ほんとに冗談としてしか身の上話はきいてられないが、課金額ほどその人を正確に表すものはないと思う。


『あーそろそろとみり休憩入る頃だな』


そう言われて時計を見るととっくに日付が変わっていて、1時になるところだ。
うちのカフェバーでは叔父ともう1人の社員がお酒でも作ってるところだろう。おれは日中のカフェのほうが多いが、社員が出られない曜日は夜のバーの方にでている。

だから睡眠時間にバラつきがあって、こうして夜行性なことが多いわけだが


《眠くなってきた》


さすがに、今日は少し早起きしたから眠たい。


『んじゃ、ありすもこねーしお開きにするか』


とみりくる前に逃げようぜ、なんていう助さんは本当にとみりさんと仲が良いのか。




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