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怠惰の二年生3






ぽつぽつと、LINEをするようになった。
だれってまあ、淡白王子と。

今日の授業であいつがあー言ってた、それわかる、最近好きなお菓子。うんぬん。次の日には忘れてそうなくらいくだらない話を寝る前に少しして、返事がかえってこなかったら寝てるし。返さなかったら寝てる。
結局、付き合っているのかはよくわからないがなんだか満たされている気がする。

「あんた、何?彼女できたの」

リビングで大きいテレビを陣取って観ているおれは珍しくもないが、その手に握られてるアイフォンをみて姉がそう言ってきた。

「いや?」ちがうと首を振る。


「ふーん、じゃあ好きな子と連絡中?」

「いやちがう」


そもそも、女という過程を消して欲しい。

おやじの毛根ほどに女の連絡先がはいってないおれの携帯が可哀想だ。さんかく座りしたままの俺の隣に、遠慮なく隕石みたいにどすんと座った姉に少しは大人しく座れないものかと冷めた視線をやる。お互いに喋るわけでもなく、大画面テレビに映し出される洋画を観ているとアイフォンが震えた。
バイブにしてあるから音はなくて、握っていた俺だけがそれに気づいて画面をチラッと見る。


《なにしてんの》


暇人か。

淡白王子は意外とこーゆーLINEを寄越してくる。
映画観てる、と返したらまたかよと返ってきて、うるせえだなんて適当に打ち込んだ。
それを横から見てくる視線がうざくてわざと画面を見えない様に、俺もそちらを見ない様に無視していたのに向こうから「女か」とちょっかいをかけられるので「ちがうやめて」と返さざる得ない。

その後も何件かLINEがきていたが、映画がいいとこだったし姉もうるさいのでもう携帯は手放した。





「しゅーんや」


友人がりんご飴を持って学校にやってきた。

おまえどこかで祭りでもしてたの?そう問いかけると作りましたとドヤ顔されたけどなにその無駄な女子力。しかもなんでこんな食べづらいもの学校に持ってきたよ。小ぶりなのをひとつ受け取ったはいいけど、鞄に入れるとべとべとになりそうで机の端っこに立てといた。

「なにそれ」

通りかかった王子様フェイスこと、静間が笑いながらりんご飴を指す。


「りんご飴」

「どっかで祭りでもしてたの?」


その返しに、じぶんとまるで同じことを言っててふはっと笑いが溢れる。
やっぱりりんご飴いこーる祭り!って連想するもんだよな。普通に作ってくるだなんて誰も思わない。友人はどこかズレていると思う。笑ったおれを物珍しそうにみてる静間は、小さく何か呟いたけど聞こえなかったから無視した。最近イヤホンするからか耳が遠くなっている気がする。


「これ、あいつが作ってきてくれたの」


りんご飴を掲げながら静間にいうと、あいつ?と首をかしげるから教室の後ろの方でべつの奴にもりんご飴配って馬鹿みたいに笑いを取ってる友人を指す。へえ……と感情の読み取れない表情でそちらをみている静間は、ほかの教室に入ってくるやつらにおはようの挨拶をされて「おはよ」と返す。おれの近くで挨拶するのやめてくれないかな、ちょっと周りの何話してるんだろうみたいな視線を送ってきて痛い。そうだよな、変な組み合わせだよな、ちょっと前まで話したことなんてなかったし、月とスッポンみたいに俺には見上げるような存在なわけだし。これだから静間と話すのは嫌なんだ、また身体の虫が泣き出してしまう。何もない自分がコンプレックスであるだけに、顔良し人良しみたいなどうもがいても好印象しか受けない静間は毒でしかない。


「おーい、静間がりんご飴ほしいってー」


「え」言ってないけど。そう言って友人を呼びつけたおれの肩を揺さぶる静間に、喜んでりんご飴を配りにきた友人は早く言えよな〜なんて気さくすぎる。
とゆか、あの袋の中にはあと何個りんご飴があるのだろうか、あれ?待って、淡白王子にあげてるのりんごじゃなくていちご。
「おれもいちごが良いんだけど」というと、いちごはコスパが高いからお前は駄目だと言われた。




(友人やめようかな)