天使たちのだましあい | ナノ


自分は随分とずる賢い男になったものだなあと冷静に考える。目の前のコレットちゃんはどうやら俺の真意に気付いているらしい。苦笑いで告げるのだ。「ゼロスは、ずるいよね」彼女が何を思ってこう言ったのか、俺にはまったくわからない。自分からすれば、この小さくて可憐な神子様のほうが、何倍もずるいように感じられる。「ロイドは、ゼロスばかり見ているもの」本当に、彼女は何を言っているのか。「ロイドくんが、俺様を?それはないよコレットちゃん」いつものようにおちゃらけてみせた。彼が自分を見てくれないから、自分はこうして周りを取り囲んで必死になっているというのに。逃がさないように、じわじわと、外側から。「そんなことしなくても、ゼロスなら大丈夫だよ」きれいな彼女を見ていると自分の汚い部分が浮き彫りになるので、あまり好きではなかった。あいにく自分はそう簡単に人を信じられる質ではない。「あはは、ありがとね」薄っぺらい笑顔を貼り付ける。それでもきっと、彼女はこれが作り物であるとわかっている。知らないままでいてくれるのだから、年下であるはずの彼女のほうがよっぽど大人に見えた。そこでこの話はおしまい。次に口を開くとき、この場にいるのはただの女好きの赤い神子と、まじめで可愛らしい金色の神子。今日の買い物当番は、自分たち2人だ。



使


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シンフォニアおめでとう