死の淵で逢いませう | ナノ


長い年月を生きた。いろいろなことがあった。結局は畳の上で死んだ。意識を失う瞬間に、あの声を聞いた。「あの世でお待ちしておりまする」最後に聞いたのはいつだったか、もう何十年も前。その声を奪ったのは確かに自分だった。目が覚めるとそこはきっと地獄でも天国でもない。表現するならばただの無でしかない。色はおそらく白。起きた瞬間から理解した、ここは死んだあとの世界なのだと。小十郎は俺より先にこの世に来たのだろうか。何故か容姿がおよそ二十の頃に戻っていたがあまり気にしない。とりあえず、最初の一歩を踏み出した。


「お待ちしておりました、政宗殿」


俺の体にいかずちが走る。きっとずっと俺は、この声に焦がれていた。振り返るとやけに目立つ赤色。そういえば自分も、随分と目立つ青色をしていた。