「新しいベッドがほしい」 僕のお嫁さんはひどくわがままで子供っぽい性格をしている。マイペースで気まぐれなところは僕の性格とまったく合わないが、それでも何故か結婚にまでこぎつけてしまった。どうしてこの人なのだろうと毎晩考えてみてはいるが、隣のベッドでのんきに寝こけている姿を見るとどうでもよくなってしまう。これが惚れた弱みというやつだろうか。 「最初にこのベッドじゃなきゃ嫌だって駄々をこねたのはあなたでしょう」 「だって、あの時は嫌だったんだもん」 「まったく…」 「ねえねえ、一緒に買いにいこうよー」 使い慣れたのでなければ嫌だといって、わざわざ借りていた宿のベッドを無理矢理買い取って新居に持ってきたのはこの人だ。その自分勝手さに少しだけ呆れかえってしまったが、この人ならしょうがないとあきらめた。しかし、そこまでして手に入れたものを突然手放すことができるのだろうか。気まぐれの一言で済ませてしまえばそこまでだが、どうにもしっくりこない。 「…そんなに僕と同じベッドで寝たいんですか?」 いつものように、ふざけてからかうような口調でなんとなくそう言い、そんなわけあるかと怒鳴られることを予想していた。ある意味、これは僕の願望でもあるのかもしれないけど。だから、彼女が顔を真っ赤にして固まってしまうだなんて、想像してすらいなかった。 「ノーマさん…?」 「そ、そりゃあ、私らしくないことはわかってるよ。悪かったね!」 「別に、…悪いなんて一言も言ってないでしょう」 「だけど」 「ほら、行きますよ」 「う、え、ジェージェー…」 「僕のものにもなるんだから、僕の好みも取り入れてくれなきゃ困ります」 柄にもなく熱くなる頬に、視線を彼女から逸らしながら手を差し伸べる。この感じたことのない雰囲気が恥ずかしくてたまらない。互いに手をつないで買ったばかりの新居を出た。これじゃあまるで新婚夫婦みたいだ。 |