マイ・ガール | ナノ


「また泣いてるの」
「…違いますよ」



つくづく心の弱い人間なのだ。人の感情に敏感で、自分のことには無頓着なお人よしすぎる、とても小さな女の子。すべてを自分の中にしまいこんで、吐き出し方を知らない不器用な女の子。もっと肩の力を抜けばいいと何回言っても言うことを聞かない、僕の嫌いなタイプの、頑固で馬鹿な女の子。けれど、そんなところが愚かで愛おしくてたまらない。


「まったく、しょうのない子」


目元を真っ赤にして泣いていないらしい彼女を無理やり引き寄せて抱きしめる。こうしないと素直になれないというのだから、本当に僕の思い通りにならない、めんどくさい女の子。僕の目を見つめて、震える手でゆっくりと服の裾を掴んで、そうしてやっと本音をこぼすことのできる、ひどく遠回りな女の子。彼女から溢れ出る水滴が僕の服に染み込み、だんだんと滲んで広がってゆく。まるで今まで溜め込んできたものがすべて溶け出していくよう。そのまま彼女まで一緒に溶けてしまうんじゃないかと思うくらい、儚く脆い女の子。


「総司さん」
「なあに、千鶴ちゃん」
「総司、さん」
「うん」


たった今崩れ落ちた彼女も、きっと明日になればまた普段どおりの毎日を送るだろう。そして限界を感じたころにまた、ふわりと僕の目の前に現れる。僕の世界にいる、たった一人の大切な女の子。