夢と現実のはなし | ナノ


「ちづ」今日もあの夢を見た。いつもと同じように名前を呼ぶ男の人、どうすることもできないわたし。近づいて腕を伸ばし、その体がだんだん色づいてゆく。しかし、そこでいつもと違うことが起きた。「雪村」ちづ、と呼んでいた声が、初めてわたしの上の名を呼んだ。「雪村、…雪村」「ん…」終わりを告げる前に夢が途切れ、かすんだ視界のまま顔を上げる。目の前には男の人がいて、まるでさっきまで見ていた男の人に完全に色がついたよう。「だれ…?」あなたはいったい誰なのと、今ならはっきりと問いかけることができる。ぼうっとした思考の中で、わたしは確かに、あの声を聞いたのだ。