銀河の果てで君を待つ | ナノ



随分と前に届いたメールには、今日は仕事が早く終わるから夕方頃には家に着くという内容が記されていて、でもその夕方という時刻はとっくに過ぎていて、デジタル時計の左端には22と大きく表示されていて、折角作った料理もすっかり冷えきっていて、俺は何も考えずただぼうっと大きなベランダの窓の前で星ひとつない夜の空を静かに眺めていた。ここは高層マンションの上のほうの階だから邪魔するものは何もなくて、一面の紺色だけをはっきりと見ることができた。

二人でいると贅沢にも狭いと感じるこの部屋も、一人でいると広すぎて煩わしさすら感じる。空を見つめたまま横たわり、力を抜いて体を床にあずけた。フローリングが冷たくてきもちいい。どれほど見上げていたのかわからないくらい時間が経ち、次に体を動かしたのは少し距離のある玄関からガチャと鍵をいじる音がしたときだった。普段ならきちんと出迎えにいくのだけど、今日ばかりはそんな気も起きなくてその場に倒れこんだまま。



「銀時!」



焦った表情で俺のもとまで来た土方は額に汗をかいていて、歪んだ顔のまま横たわった俺の体を抱き起こした。泣きたいのはこっちだというのに、やつの方が泣きそうな顔をしていたからなんとなく頭を撫でてやる。そうしたらもっと辛そうな顔をするから、俺はどうしたらいいかわからない。



「おかえり」
「ごめん」
「いいよ、そんなの」



汗をかくほど急いで俺のために帰ってきて泣いてしまいそうになって、俺はそれだけで心が満たされた気がする。さっきまでは拗ねて拗れて仕方なかった俺の心は、こいつが目の前に来ただけですべてが解決してしまうのだから、ひどく単純に作られていると思った。




―――――――
乙女銀時