瞼に押し付けた朝焼けの色 | ナノ



シーツがむき出しの肌に擦れる感触で目を覚ました。頭がうまく働かないせいで昨日の記憶が曖昧だったが、共に夜を過ごした人はなんとか覚えていて、隣を見ると既に起きていたのか、微睡んだまま何も言わずこちらをじっと見つめている。辺りを見渡すとここは自室のようで、使いなれたダブルベッドにいつもはないものが横たわっているというだけでなんだかここが違う場所のように感じた。



「…起こしたか?」
「いいえ、大丈夫です」



何も身に纏わず部屋を共有し、互いが男女であるというだけで二人の間に何があったかは明白で、いちいち口に出さなくてもこの雰囲気が答えを表している。千鶴はまだ少しだけ寝惚けているようで、大きな瞳が普段よりも蕩けているのがわかる。真っ白な頬に手をやると少しくすぐったいのか、千鶴は小さく笑ってこちらを見つめたまま、仄かに甘さを含んだ声音で小さく呟いた。



「土方さん」



目尻を下げて柔らかく笑う千鶴にいとおしさが込み上げた俺は、自分から溢れだす欲求をすべてこの甘美な空気のせいにして、昨夜何度も繰り返したであろう口づけをもう一度千鶴に施した。後先のことは何も考えず、今はただこの心地好い感覚に酔いしれていたかった。




――――――
既婚者上司x部下