仕上げの紅色 | ナノ


普段は分厚いジャケットに隠されているソーマの体は思っていたよりも細く薄いもので、抱き締めたら折れて壊れてしまうのではないかと些か不安になった。実際は抱き締めようとした瞬間に思いきり蹴飛ばされて鼻で笑われるのだろうが、想像するくらいなら構わないだろう。彼はコウタに借りたというゲーム機にばかり目を向けて一度もこちらを見ようとしない。緩んだネクタイと少しだけ開けられたボタンから覗く浅黒い首筋は無意識に俺を誘惑する。それに素直に誘われる俺も俺だと人は言うけれど、据え膳は食わねばならないだろう。ゲームに夢中な腕を掴むと、ソーマは驚いた顔をしてこちらを見た。それと同時にゲームオーバーらしき音楽が聞こえてきて、申し訳ないとは思ったがそれより気になることがあった。腕が前よりも細い。



「お前、また痩せたのか」
「関係ねえだろ」
「飯食ってねえな?」
「…食ってるよ」
「嘘つけ」
「うるせえな、母親かよてめえは」
「恋人だ、バカ」



不意を衝く台詞に羞恥を覚えたのか、顔を赤くしたソーマは思いきり腕を振り払い俺と距離をとろうとしたが、俺はそれを許さない。腰をがっちり掴んで押さえつけたまま、もがくソーマを抱え込んだ。


「心配させんな」
「お前は俺を離せ…」
「嫌だね」
「何脱がせてんだバカ!」
「お前が悪い」
「ふざけんな…!」


この行為を終わらせたら無理矢理でもこいつの口に食べ物を突っ込んでやろうと決めて体を反転させた。誘惑から逃れることは結局できないのだった。




―――――
なんだこの話