恋心は色褪せない | ナノ




朝起きて歯磨いて顔洗って、リビングに向かうとうまそうな朝食が用意されていて、これをみるたびに、毎朝幸せだなあとまるで他人事のように自分の事を考えて、その朝食を素通りし台所で奮闘するしえみの後ろ姿に腕をまわす。これが俺の、いつもの朝の風景だった。


「燐、おはよう」
「…んー」
「ほら、朝ごはんたべよう」


しぶしぶしえみの腰から手を離し、いつもの席に座る。俺の隣にしえみが座るのはもう昔からの癖みたいなもんで、他のやつらには向き合わないのはおかしいと言われるけれど俺たちはそうは思わない。隣にしえみがいるのが安心するのだ。こんなこと、普段は恥ずかしくて言えないけど。


「燐ってば、寝癖ひどいよ」
「…どこ?」
「ここだよ。…ふふ、いつまでも子供みたいね」
「……お前もな」


指差されたところをおさえながらふとしえみの方をみると、クリーム色の髪先が跳ねている。それがわかったのか、恥ずかしそうにそこをおさえてしえみは俺を見やる。その姿がなんだかとてもいとおしくて、音をたてずにおでこにキスをした。


「り、燐…!」
「ふは、なんだよ」
「…なんか、新婚さんみたい」
「ばか、そうだろ」



朝食に手をつける頃にはもうすっかりそれは冷めていたけれど、幸せだと感じることができるなら、俺はこのままでいいと思った。




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forつぶ貝さん
リクエストありがとうございました!
新婚さんおいしいです(笑)
こんな感じの燐しえでよかったら
受け取ってやってください。

pochi/日高