「プレセアちゃん、寒くない?」 「平気です」 「うそ。肌赤いじゃない」 「…けど、大丈夫ですから」 彼女は人に甘えることを知らない。何でも一人でこなし何でも一人で乗り越え、すべて一人で終わらせてきた彼女はいつしか人を遠ざけるようになった。甘やかしてやるには自分から近づくしかないのだ。突き放されても諦めずまっすぐ彼女にぶつかるしかない。 「ゼロスくんは、どうして」 「なあに?」 「どうして私なんかと一緒にいるんですか」 彼女は自分のことを気持ち悪いと言った。感情も表情も希薄で、人々から疎まれ蔑まれてきた自分にどうして、と。 「ほっとけない」 「…え」 「ほっとけないのよ、プレセアちゃんのこと」 確かな答えは出ていたが、言うのはまだ早いと思いそれは伏せておいた。泣きそうな顔をした彼女の頭を撫でて俺のマフラーをかける。そうやって意識を積み重ねて、いつか俺だけをみればいい。 ――――― |