視界の先に映った後ろ姿に気持ち小走りで近づくと、いつもとは違うほんのり甘い香りが鼻を掠めた。 「出雲ちゃん、シャンプー変えた?」 「…なんであんたにそんなこと」 驚いたように目を丸くしたので、きっとその予想は当たっているのだろう。ほんの少し近づいただけで些細な変化にも気づけてしまうくらい、自分は出雲ちゃんのことばかり見ている。我ながら女々しいとは思うけれど、だからといってやめるつもりは毛頭ない。 「出雲ちゃん、ええにおい」 「急に何…」 「僕、これすき」 途端にぶわっと顔を真っ赤にした出雲ちゃんがかわいらしくてしょうがなくて、思わず抱き込んでしまいたい衝動に駆られるけれどそれをぐっと抑えて頭を撫でるまでに留める。自分は別に出雲ちゃんが好きだと言ったわけではないのに、わかりやすいくらい恥ずかしさをあらわにした彼女がとてもいとおしくて、ゆるむ口だけはどうしても抑えられなかった。 「何笑ってんのよ!」 「ん、なんでも」 きっと彼女は明日からもずっとこの香りを身に纏って、僕のすきで居続けるんだろう。 ――――――― |