虚言癖 | ナノ


「アルは嘘つきね」
「…どこがだ」


昔はどうであれ今は敵だと言うのに、たまたま鉢合わせた街で私を呑みに誘うアルヴィンはわざとなのかわざとじゃないのか、微妙な雰囲気を馬鹿にしたような笑みを浮かべて楽しんでいる。この様子をお互い今の仲間に見られたら一体何と言われるか。私はともかく、アルヴィンの場合既に前科があるのだから、もし見つかってしまったらまた信用を失い罵られるのだろう。決してそんなことを望んでいるわけではないのに、この男は自分を傷つけることで自己の存在と本来の目的を確認するのだ。まったく、馬鹿な男。


「嘘ばかりついてるじゃない」
「俺ほど正直な人間はいないと思うぜ?」
「それも嘘ね」
「…さっきから何なんだよ」


彼のイラつきがこちらにも伝わってくる。さっきから遠回しでしか物事を言わない私に痺れを切らしたのだろう。自覚があるのかないのか、どちらにせよタチの悪いこの男の核心を突くには、何事もストレートにいくしかない。


「あなた、あの子が好きなんでしょう」


その瞬間飛んできた殺気には迷いがあった。動揺を相手に悟らせることは、それが本当だと肯定しているようなものだ。


「お前、何…」
「いい加減嘘をつくのはやめなさいな」


そのまま自分の酒代だけを置いて、私は席を立った。大方、妹のような娘のような位置にいた女の子が突然そういう対象になった事に戸惑いを覚え、宿に帰りにくいのだろう。外見に似合わず、まるで恋を覚えたばかりの幼い少年のようだ。


「…俺、子供は嫌いなんだよ」


店を出る瞬間に聞こえた最後の悪あがきに、私は思わず笑みをこぼした。そもそも私は「あの子」がエリーゼだとは一言も言っていない。これで彼の決心がついたというなら、私がついた今までの嘘も報われる気がした。



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アル→エリ