恋の胎動 | ナノ


どのくらい時間が経ったろうか。僕は今、白とピンクを基調とした女の子らしい、要するにアリスの部屋にいる。どうしてこうなったのかというと、アリスに無理矢理連れ込まれたのだ。元気のないアリスに声をかけたら、そのまま。部屋についてからも彼女に元気はなく、シャツの裾を握ってただ俯いてるだけだった。


「あの、…アリス…?」


返事はなかった。勇気を出してもう一度声をかけると、アリスはやっと顔を上げた。その目にいつものような気迫はなく、傲慢で強欲で女王様の、いつもの自信に満ちたアリスの様子は欠片もなかった。流石に放っていくわけにはいかないと、僕は話を進める。


「あの、どうかしたの…?」
「…ペットちゃん」
「え?」
「…やっぱり、素直な女の子の方が、かわいい?」


眉間に皺を寄せて、悲しそうにアリスは僕に問いかける。そして気づいた。アリスがこんなにも元気がない理由と、その原因。


「…アリスは、素直じゃなくてもかわいい」
「……」
「って、デクスは思ってるんじゃないかな」


アリスはその答えに目を見開いた。と同時に、彼女愛用の鞭で思いきり頬を叩かれる。顔を赤くしたアリスはそれこそ年相応の女の子で、僕は思わず叩かれた頬を緩ませた。


「な、なんでこのアリスちゃんがあんな奴のことで悩まなきゃなんないのよ!ペットちゃんのばか!」
「アリス、真っ赤…」
「うるさいわね!もう出てって!」


壊れてしまうほどの勢いで扉を閉めたアリスは、きっと体を赤くしたままその感情を全否定しているのだろう。ある意味、デクスのしてきたまじないの類いは本当に効果があったのかもしれない。


「デクスもはやく気づけばいいのにな」



誰から見ても両思いの二人をやきもきしながら見ているこっちの身にもなってほしい。もう巻き込まれないことを願いながら、僕はアリスの部屋をあとにした。







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デク→(←)アリ
だけどなんかエミアリみたいになった


title:環