夜の小道。 「ねえねえ」 名を呼んで触れようとしたらぱちんと弾けた。何が起こったかわからなくて目をぱちくりさせたら、燐はいつも通り振り返ってぶっきらぼうに返事をした。 「なんだよ」 だって。そんな反応にも慣れたもんで、私は笑ってごまかす。 「ううん、なんでもない」 ただ返事をしてくれたことだけが嬉しくて微笑む。そしたらまたぱちんと弾けた。私の斜め前を歩く燐は、遅いと文句を言いながらゆっくり歩いてくれる。それでもまだ斜め前にいるから、それがもどかしくて。明日こそ隣を歩きたいと密かに願っている私。そんな私を燐は知らない。何をするにもいちいち弾けるの。だから触れることもできないし会話もできないし、いつもいつも思ってる、明日こそ。それでも、たまには燐にだってもやもやしてほしい。けど燐は恥ずかしがりやだからしょうがないね。それなら私が燐の傍にいようか。私ばっかりが惑わされようじゃないか。見つめているだけでぱちんと弾けるんだから、それくらい簡単さ。 後ろ姿をうつしながら、星は静かに2人を見下ろしている。 ─────── bgm:星に願いを /9mm parabellum bullet |