雪崩れるようにして勢いよくベッドに沈んだ。そのまま口を一思いにくわえられ二酸化炭素の交換をしたあと、無くなりかけた酸素の補充をした。もし未だずっとシーオーツーの交換を続けていたら、俺の頭にはちかちかと星が舞って昇天していたことだろう。胸を大きく上下させて霞む視界のまま上に乗っかったやつのことを見つめた。こいつの行動はいつだって突然だからこんなの慣れっこだ。間もあけずに首筋に噛みつかれて、流れで最後まで致してしまう。全てが終わり、心臓が落ち着いてくらくらだった脳みそが正常に動きだしたころ、やつはやっと俺の上から退いた。ゆっくりと体を起こして、俺に背を向けるやつの後ろ姿をじっとみつめる。 人間の体は酸素炭素水素窒素カルシウムリンナトリウム鉄水その他多くの物質によってできているらしいが、こいつはどうもそんなややこしいものでできていないような気がする。もっともっと単純な何か。 「おい」 「…なあに」 「はらへった」 「……」 「お前の作ったメシが食べたい」 「…こーすけ」 「なんだよ」 「怒ってないの?」 「なんで怒るんだよ」 「だって無理矢理やったんだよ?」 「いつものことだろ」 「う…」 「いいから、ごはん作って」 「ん、こーすけ」 「あ?」 「ごめんね」 「…いい、別に」 「ふふ、ありがとう。すきだよ」 「……ばかじゃねえの」 さっきまで無理矢理くわえられた口を、今度は俺がくわえてやった。しょうもないやつ。 ────── おかしなカップル |