「志摩くんて、やさしいんだね」 それは君だからだよ、とは到底言えなかった。そんな純真無垢で汚れもしらないような笑顔で見つめられると、下心でできた僕は真っ白な君の色を塗り替えてしまいたくなるんです。こんな誰でもしてくれそうな親切な行いをしたのが僕じゃなかったら、君は違う誰かにこのほほえみを振り撒いていたのかい。そうしてまた君は人を魅了するんだね。そんな君に、僕は気が気じゃないって気づいているのか。もしこれが計算とかだったとしたら、君はとんでもない魔性の女だ。そんなことは万が一にもないのだろうけどさ。 「杜山さんかて、やさしいやろ」 「ううん、そんなことない」 ないわけあるか。 はじめて会った頃よりも幾分か伸びたクリームの髪を耳にかける仕草が、とても綺麗。こんなとこにまで目がいってしまうあたり、僕は重症だろう。ふせた目からのぞく長いまつげとか、少しだけ潤んだ大きな瞳とか、いろいろ。時たま、僕はとんでもないものに惚れたのではないかと思ってしまうくらい、綺麗。なんてさ。 「ほんじゃ、また」 「うん。またね」 明日も君に会えたらいい。君にやさしくする相手が、僕だけだったらいいのに。 ────── 独占欲 title:剥星 |