ゆめみるまつげ | ナノ


覚えのない温もりに目を覚まし隣を見ると頭が一気に覚醒した。そうだ、俺。こいつと一緒に。シーツと毛布から覗く白い肩とほんのり赤が散った首筋に手を伸ばしてそっと触れる。冷えた手のひらに驚いたのかしえみの体はぴくりと動いたが、ただそれだけだった。なんだかその反応がおもしろくなくて、俺はなぞるように首筋、鎖骨、肩、二の腕に手を這わす。俺は昨日、この柔らかくキメの細かい肌に覆い被さったんだ。なんだか実感がわかなかったが、何故だかそれをみんなに自慢してやりたかった。俺が初めてしえみに触れたのだ、しえみが初めて俺に触れたのだ、と。


「りん…こそばゆい」
「わり、起こした」
「どしたの?」
「んにゃ、なんも。…ほら、まだ寝ろ」
「んー…」


少し目を開けたと思ったらしえみはまたベッドに沈んだ。すぐに規則正しい寝息を立てて、やっぱり昨日は疲れたんだと思った。そりゃあ、そうか。

肩をなぞる手を止めて頬に持っていく。ほんのり赤いそれにそっと手を添えて、指で軽く撫で上げてからまぶたに音をたてないでキスをした。


「…おやすみ、しえみ」






title:zinc