「ヒバリ」 「…あ」 寒い夜、久しぶりに山本武が僕の前に姿を現したと思ったらすぐに部屋は真っ暗になった。そうだ、今日は停電する日だった。今更思い出してももう遅いので、とりあえず山本武を部屋にあげた。こいつと会うのはいつぶりだったか。前までは何かしらあるとすぐに僕の元へやってきたのに、ある日突然ぱたりとやってこなくなった。別にそれが寂しかったとかそういうわけではないが、会いに来ないことが何故かしゃくにさわった。だからといって僕があいつに会いに行くのなんてもっとむかついたから、とりあえずなにもしないで山本武のことを頭から追いやった。 そしたら、また僕の元へやってきた。 「…なにしにきたの」 「なにって、ヒバリに会いに来たんだよ」 「…あっそ」 真っ暗なので山本武の表情は全く見えない。ある意味好都合だったかもしれない。山本には僕が見えないってことで、僕が今どんな顔をしているかわからないだろうから。自分でもわかりたくない。 「ヒバリー」 「…なに」 「寂しかったか?」 「ばかじゃないの」 知らないよ、そんなの。隣に座る山本武の肩に頭を預けて、そっと目を閉じた。このまま明かりがつかなければいい。 さみしいなんて、そんなそんな ───── 押してダメなら引いてみた山本 |