スパーク・ロマンティカ | ナノ




「見つけた、お姫さま」


暖かい日射しの下でゆるやかな午後を過ごすのがここ最近の私の日課だった。彼がここを訪れている間もそれは変わらず、昨日まではまだ見つかっていなかったのだがたった今ついに見つかってしまった。大きな木に寄りかかる私の隣に座り、昨日の夜に焼いた紅茶のケーキに手をつけたアルヴィンはよくできました、と言うように私の頭を撫でる。どうやらお気に召したようだ。前回の訪問でこれを口にした時はまだまだと言って額を指ではじかれた。それにむっとした私はこの一年間彼の思惑通りに動き、上達して彼に返すことができた。それがなんだか嬉しくてその大きな手に思わず擦りよってしまうのだが、大人げない行動だと気付くとすぐにそれから離れた。私はもう子供じゃないのだ。



「やめてください…」
「お、ついにませたか?」
「……」
「はは、拗ねるなよお姫さま」
「拗ねてないです!」



会うたびに子供扱いをされて、大人であるアルヴィンに軽くあしらわれてしまう。そんな余裕をみせる行為が嫌でたまらなくて、私は彼を全力で睨むけれどそれすらも受け流される。次に会うときまでにはもう少し大人の女性になっているように努力しようと決意する、と同時に、毎年味わっている寂しさが体を襲った。いつになっても慣れないこの感覚。あと少しで、春が終わってしまう。



「春が終わるなあ」
「そうですね」
「…また来年くるよ」
「別に、待ってないです」
「そりゃ悪かった」



春の間の短い期間だけ、商人である彼は私の屋敷を訪れる。その後は彼がどこで何をしているのかもわからず、私は次の春までひたすら彼を待ち続けるのだ。また長い間、会えなくなってしまう。



「体には、気を付けてくださいね…」
「ああ。…エリーゼも、元気で」


もうすぐ、夏がやってくる。




――――――