言い訳にしては生臭い | ナノ




好きな人がいるんだ、といとおしそうな目で告げる彼は、俺を通して誰を見つめているのだろう。目尻を下げ、口元も緩み、頬を染めて笑う彼は、本当に俺の知らないその人が好きでたまらないというような雰囲気を醸し出していて、それがさらに俺の心を打ちのめす。遠まわしに俺なんか始めから眼中にない、そう言うように。


「告白はしねえの?」


自ら傷をえぐるような真似をして、まったく自分は大ばか者だ。けれど、彼が言ってほしそうな目で俺を見つめるから、それを叶えずにはいられない。好きじゃなくても傍にいてほしいと願うのは、愚かしい自分のエゴでしかない。



「したいけどねえ」
「しちまえよ」
「でもやっぱ怖いというか」
「お前なら大丈夫だって」


だから、さっさとくっついて俺の気持ちを完全に届かないものにしてくれ、と。なかなか諦められないだろうけど、いつか思い出にしてみせるから、と。そんなことは本人には言えないけれど、それを強く望んでいるのは確かだった。好きな人が幸せになってくれればそれでいい。そう思うのも、自分勝手なエゴに過ぎないんだろう。



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