もう少しまどろみのなかで | ナノ




シンクにたまたま用があったので何処にいるかと近くの兵士に聞いたところ、彼は部屋に戻ったという。勝手に入ると怒られるのできちんとノックをしても返事がない。おそるおそる部屋の扉を開けると、ベッドの上に丸まって寝ているシンクの姿があった。いつも着けている金色の仮面ははずされていて、こんなに無防備に寝ているシンクを見るのは初めてだったので少し驚いてしまった。


「シンク…?」


呼んでも返事はなく、じりじりと近づいても彼が私に気付くことはない。いつもならそばに近寄るだけで来るな、鬱陶しいの一言で突き放されてしまうので、なんだか不思議な気分だ。調子に乗ってベッド脇まで移動してみたが、シンクは寝息を立てたまま眠っている。普段は大人びているシンクも、寝顔は幼いままでなんだか安心した。白くて傷のない肌も相まって、なんだか女の子みたいだ。



「ふふ…」
「…なに、笑ってるの」
「え、あっ」


顔をじっと見つめていると突然シンクの目がばちっと開き、そのまま腕を引かれた私は体勢を崩してベッドの上に倒れ込んだ。すなわち、シンクの上。不機嫌さを隠さない彼は舌打ちをして私を思いきり睨む。けれど腕には力が入ったまま。



「シンク、離して…」
「やだ」
「…ごめんなさい」
「許さない」



しがみついて離れないシンクは私を抱えたまま横向きになってもう一度目を閉じてしまう。もがいてもびくともしない腕に最終的には諦めて体の力を抜いた。シンクの体温は温かくてちょうどいい。しばらくじっとしていると、だんだんと眠気が襲ってきた。



「…アリエッタ」



意識を失った直後に、名前を呼ばれたことには気づかなかった。




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