▽凌大
戦場へ立ち向かって行く後ろ姿をわたしはただ見ていることしかできなかった。本当なら止めることだってできたはずなのに、わたしはそれをしなかった。行ってくる、そういった彼の目には強い意思があった。それをわたしが阻むなんてことしたくなくて、その背中を送り出した。時は経ち、しばらくしてから報せがくる。結果は誰もがわかりきっていたこと。呉は敗れ、それから彼が帰ってくることは二度となかった。亡骸も帰らず、見かけだけで空っぽな彼の墓を訪れた人は口を揃えてこう言う。「早すぎる死だ」と。その死を迎えさせてしまったのは紛れもないわたしなんだろう。後悔しても遅いのだ。凌統さまはもうここにはいないのだから。どこにもいないのだ。
「おねーちゃん?」
幼さの残る声にはっとした。前を向くと年の離れていない妹が心配そうにこちらを見ている。そうだ、今はファミレスで勉強を教えているところだった。
「最近よくぼーっとしてるけど、どうしたの?」 「ううん、大丈夫」
気付いたらぼうっとしている。まるで自分がここじゃない別のところにいるような、そんな感覚。そこにいる自分が本物なのか別人なのかはよくわからないけれど、そこにいる自分は大切なものをそこに置いてきたような気がする。
――――― 書き途中ですが 凌統と大喬
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