指先にキス | ナノ


今日は朝から彼氏である蔵ノ介のお家に来ている。テスト期間ということで、先程からカリカリとノートにペンを走らす私達。

ふと正面に座ってる彼を見れば、少し俯きながらさらさらと問題を解いている。その姿があまりに美しくて暫くぼーっと眺めていたら、視線を感じたのかばっちりと目が合ってしまった。


「さっきからどうしたん?そんな見られると照れるやん」

「蔵ノ介って綺麗やなあ〜と思って見取れてました」

「なんやそれ。そんなおだてても何も出んよ?」


眉を下げながら困ったように笑うその姿も美しい。男性だけど蔵ノ介には美しいっていう形容詞が似合う。かっこよさもあるけれど、一枚の絵になってしまうほどその容姿は完璧である。

完璧なのは容姿だけじゃなくスポーツ万能だし頭だって良い。おまけに人柄だってよく信頼も高い。天は二物も三物も彼に与えているのかな…。


「蔵ノ介が羨ましいわあ…その容姿や知能を私にも分けてほしいです!」

「そら無理なお願いやなあ。知能は勉強すればついてくるし、今でも充分可愛いで?」

「おだてても何も出んよ?」

「本心を伝えただけや」


ほら、こうやってすぐ嬉しくなるような言葉を素で言う。天然の色男は気障な台詞を言っても絵になる。


「蔵ノ介成分をひとつでも私に下さい」

「俺の愛をあげよか?」

「…もう充分貰ってます」

「まだまだ与え足りんけどなあ〜。……そうや、ほな俺からしかあげれんモンあげよか?」


そう言うと私の顔をジィーっと見つめ、にこっと綺麗にほほ笑む彼。すると腕を伸ばし私の髪をサラサラと撫でる彼に、何だろう?と疑問符が頭に浮かぶ。


「そうやなあ…白石って名字やったらあげれるよ?」

「…っ、!?」

「今すぐには無理やけど…その時は貰ってくれる?」


それって、つまり…
そういうことだよ、ね?

ドキドキと鳴り響く鼓動がうるさくって、ペンを握る掌は汗まみれで、上昇する体温で顔が真っ赤になるのを感じていく。


「まあ返事はそん時に聞くから考えとってな?」


ほな勉強しよか、っていう蔵ノ介の言葉に慌てて頷くと、「顔真っ赤やで?」と悪戯に彼は笑った。



指先にキス
(その時は受けとってな?)


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一周年&相互作品です(^^)