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ベッドを背もたれにしながらたわいもない話しをする。右隣りには蔵がいて、彼の肩へ頭を預ける。


人前ではフランクな関係だが、二人きりの時は片時も離れないかのように触れ合う。それは身体を重ねるだけじゃなく、気持ちを重ね合わせるのだ。一緒にいる時間が少ない分、心を通わすことが出来るこの時間が大好き。


包帯が巻かれた左腕。包帯をすーっとなぞると「こら、こしょばいやろ」と困ったように蔵が笑った。そのまま指先へ滑らす。しなやかな蔵の手を悪戯に弄ぶ。



「蔵の手大好き…綺麗」

「そうか?豆あるで?」

「豆も含めて綺麗だよ。頑張り屋さんの手…大好き」

「ふふ、ありがとう」



その手に触れられるだけでドキドキするし、そして安心する。優しく握るその手も、ギュッと力強く握りしめるその手も…全て好き。



「蔵はキスの時いつも手を握るよね。ギュッと繋がれるの好きだなぁ…。でもなんで?」

「んー…なんでやろ?そんなん気にしたことないわ」

「そうなの?」

「ああ。たぶん俺もこの手好きやねん。柔らかくてちっちゃいお前の手が…」



そう話しながら蔵は私の手を触る。優しく優しく触れるその手つきが心地好くて自然と笑顔がこぼれる。するとゆっくりと指を絡めてギュッと繋がれる。


優しく甘いキスが降り注ぐ。もちろん私の右手には蔵の左手。唇、そして手から蔵の体温を感じる。蔵の体温と共に愛情も感じた。



「フレミングの左手の法則憶えてる?」

「キスする前にまず手を握れ」



(短歌:穂村弘さんより抜粋)

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