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「いらっしゃい財前君、まあゆっくりしていきね!」
笑顔で出迎えてくれたんは部長のお母さん。相変わらずいつ見ても部長にそっくりで、何回も遊びに来たことあるから面識がある。
「こちらこそ突然すみません。よろしくお願いします」
「いいわよ。というか無理矢理連れて来られたんでしょ?ごめんねいっつも」
「ほんまっすわ」
そう言うと眉を下げながらクスクスと笑われた。リビングに行くといつものうっさい妹がおらんかった。
「ああ、修学旅行に行ってんねん。因みにオトンは仕事で今日はおらんし、まあ寛ぎや」
「どもっす」
夕食、そしてお風呂を先にいただくと部長がお風呂に行った。おばさんとは面識あるけど二人きりになるんは初めてやった。おっとりとして気さくな人柄のおばさんは、少しぐらいの冗談なら言える間柄。部長の変態っぷりを話せば「あの子顔はええのに残念やね」と自分の息子のことをそう笑顔で言わはった。この人ほんま好きや。
「ただいま。…あら、可愛らしい子。初めまして」
「おかえり。蔵の後輩の財前光君よ」
「…初めまして」
噂はかねがね聞いていたがこの人が部長の姉さんか…。何て言うか、予想以上に美人で圧巻。大学生なんかな、ナチュラルメイクやけどなんや魅惑のオネエサンっぽい。
一旦部屋に戻ったのか私服から部屋着に着替えたその姉さん。いつの間にか俺の隣に座っててほのかにいい香りが漂ってくる。
「後輩ってことは蔵のひとつ下?」
「…っ、そうっすわ」
「ふふ、そんなに緊張しなくてええのに。蔵は?」
「…いま風呂です」
「そっかあ…。今日は泊まっていくんだよね?オネエサンといいことしない?」
そう姉さんが艶美な笑顔で話すと、スーッと俺の頬を撫でた。同い年の女なら殴り掛かってるかもしれんけど…、その色気や行動で俺の顔は一気に紅潮する。どう言ったらいいのか分からず黙っていると「ねえ…どうする?」と腕を掴まれた。
「アーホ。勝手に俺の後輩おちょくらんでくれる?」
後ろを振り向くと風呂上がりの部長が立っていて、ポンと軽く部長の姉さんの頭を叩いた。
「あーあ、せっかくいいところやったんに」
「学校の奴招く度にそれやらんでくれる?いい迷惑や」
「ふふ、ごめんなさ〜い。じゃあ光君、今夜はゆっくりしてね?」
「とりあえず部屋行こか。姉貴もおることやし」
「もしよかったら私の部屋においで?イイことしよ?」
「早う行こか」
腕を引っ張られ促されるまま部長の部屋へ連れて来られた。以前来た時よりも健康グッズが増えている。
「さっきは堪忍な。アイツいっつもああやっておちょくりよんねん」
「姉さんのことですか?」
「ああ。謙也なんかめっちゃ顔真っ赤にしててほんまおもろかったわ」
「あー…想像できますわ。てか部長も楽しんでますやん」
「まあな。あ、なんか必要なモンあったら適当に使ってええよ。なかったら気軽に言ってな」
ヨガをし始めた部長を横目に携帯からブログを更新する。テレビ見たり少し談笑するともうそろそろ寝なアカン時間になった。用意された布団に潜り込むと「電気消すで」という言葉を最後に眠りにつく。
ああー…あの姉さんやったらええことして欲しかったな。惜しいことしたわ。今からでも間に合うやろか。
20110206