千歳Birthday | ナノ


コンプレックス194(後)



「単刀直入に聞くばい。ひなは身長んこつ気にしてると?」
「…へ?」
「俺が大き過ぎるけん、ひなが悩んでると」


ひなは瞬きをしながら俺を見つめる。その表情は驚きの色で染まっている。あー…やっぱり悩んでるとね。




先日の話をたまたま聞いてから身長差について悩んでいた。ひなと一氏が並んで話している姿を見たら程よい身長差で羨ましくなった。成長する見込みがないひなと(身長が止まったらしい)、もしかしたまだ伸びるかもしれない自分。


雑誌で身長を伸ばす通販はよく目にするが、身長を縮ます通販は掲載されてない。ここ数日どうにかして小さくならないかと本気で考えた。遊園地に行ったら黒い服着た怪しい人に薬を飲まされないか…なんて馬鹿げたことまで考えてしまった。(さすがに子供にはなりたくなか。)


うんうん悩んでも結局はどうしようもない、という決断に至った。物思いに耽るのは好きだが悩むは性に合わない。そうならば本人に聞けばいいじゃないか!ということで冒頭に戻る。



「あの…なんで突然?」
「この前たまたま友達と話してるの聞いてしまったばい」
「ああ…あの時かあ。……千歳君は、どうなの?」


少し目線を下げながら小声でそう話すひな。そのもぞもぞしている態度に可愛いなあ…なんて思いながら小さいひなの手をギュッ握りしめた。



「俺はなんとも思ってないばい。ばってんひなが気にしてるなら俺も気になるとよ」

「私は……気になる」

「……なんでっちゃ?」
「……、」
「ひな?」


もごもごするひなに腰を屈めて目線を合わす。そうするとひなはプイッと顔を背けた。



「だって…子供っぽいもん」
「俺が?」
「違うよ、私が。ただでさえ小さいのに千歳君の横にいたらますます小さく見えちゃう。もう少し私が大きかったら千歳君に相応しい大人っぽい女性になるかな…って」


そう話し終えるとひなはギュッと手を握り返しながら「千歳君みたいに大きくなりたい」と呟いた。


ああ……もうなんて可愛んだろうかこの子は。



「……何か言ってよ千歳君」
「何と言うか、ひなは小さくてむぞらしかよ?小さくても大きくてもひなはひなばい」
「でもっ、」
「ひなは子供じゃなか。ちゃんと立派な大人の女性ばい。俺が一番好いとう女性…。」


白く柔らかい頬に軽くキスを落とすとひなは遠慮がちにこちら顔を向けた。



「千歳君は気にしない?」
「気にしてなか」
「そっかあ…ならいいんだ」
「もしかしたらひなの身長ば俺が取ってるかもしれんね」
「ホントに。千歳君と付き合うようになってからピタッと止まっちゃったもん」


そう冗談を言うとやっと何時ものような愛しい笑顔を見せてくれた。少し笑い合うと今度は唇にキスをする。閉じられた瞼にもキスを落とし、耳元に唇を寄せる。



「俺を食べたら身長伸びるんじゃなか?俺がひなから取った分、俺を食べなっせ?」
「…っ!」
「俺は何時でもひなを戴きたいけん、ばってんひなからも俺を戴かれたか」
「〜〜っもう!」


さっそく今食べてもよかよ?と言うと真っ赤な顔でひなが俺の胸を叩いた。ああもうこの子はなんてむぞらしか。



少し背伸びする彼女と屈む自分。そうやってキスをするこの身長差が愛しい。


20110211

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