千歳Birthday | ナノ


コンプレックス194(前)



今まであまり気にしたことはなかったが、今では自分自身を恨んでしまう。


(これがコンプレックスっていうもんとね…、)


遠くで友人と話しているひな。彼女との距離が広がった気がした。




小学生の高学年頃から身長がぐんぐんと伸びていった。身長と伴い筋肉もつき、中学に上がる頃には父と同じぐらいの目線になった。周りより成長が早かったからクラスメイトには「千歳大きかー」とよく言われた。四天に来てからもこの身長をよく弄られるが特に何も思わず、むしろ自分の個性だと思っていた。



そんなある日。部活の休憩中に忘れ物を取りに教室へ行くと、中から話し声が聞こえた。何やら盛り上がるその雰囲気に気後れするが扉を開けようとした、その瞬間。



「ひなは千歳君と最近どうなん?」
「あー私もそれ知りたい」
「なんや千歳君てミステリアスやもんなあ…普段どんな感じなん?」


(俺のこと?それにひなって…そこにいるとね?)


「うーん…千歳君は千歳君だよ。特に話すようなことは、
「いやいや、ひなの前やったら甘えるとか実はドSとかなんかあるやろ」
「甘えるとかやったら萌えるなあ!ドSはヤバいな、はまり役やん」
「え…っそんなのないよ!」



ひなと友人との恋愛トーク。別に盗聴する趣味はないが…自分のことを彼女が話しているとなったら聞いてみたい事実。伸びかけた手を引っ込み、そっと廊下から中の会話を聞くことにした。



「千歳君て手早そうやからなあ…実際んとこどこまでヤったんや?オネエサンに言うてみ?」
「…っ!なっ、なに言ってるの?!」
「テクニシャンっぽいな。だってあのテニス部でしかもレギュラーやし」
「テニス部やしなあ!」


わいわい話す中、ひながてんやわんやしているのが分かる。しかしテクニシャン…テニス部…、なんだこの会話は。(テニス部ばそぎゃん風に思われてると…?)不思議に思いながらもひなの返答を待つ。鼓動が少し早くなった。



「…もうっ!そんな意地悪したって言わないよ!」
「ひなは恥ずかしがり屋さんやなあ〜。まあそんなとこも可愛いけど」
「でもさあ、千歳君て190センチぐらいあるやろ?ひなとだいぶ身長差あるな」
「ひなは150センチないもんな」
「150センチあるもん!」
「どうだかー怪しいわあ」


今まで特に考えなかったが、確かに身長差があることに言われて初めて気付いた。大抵の人が(特に女子となると、)自分よりも小さいので、150だろうが160だろうがあまり気にならない。



「言っちゃあ悪いけど、大概な凸凹カップルやな」
「あ…、それひな気にしてることやで」
「えっ、そうなん?」
「……うん」


(……えっ…、?)


「うわー、ごめんっ!」
「あーあ、ちっちゃい子イジメやあ。アカンのにー!」
「いやいやアンタも大概イジメとんで?」



ひなが身長差を気にしている、そのことを初めて知った。確かに自分は一般的よりも身長も高いが、そのことでひなが悩んでいる…。



「まあでも身長はどうしようもないしなあ。ひなが伸びるしか術ないな」
「そうなんだけど…まだ伸びるかなあ…、」
「望み薄やな。もう止まってるやろ自分」
「…止まってる」
「むしろ千歳君の方がまだ伸びそうやもんなあ。いや、でもお似合いやと思うよ二人」
「そうそう。なんかお父さんと娘みたいで」
「アホ、ひな泣いてまうで?」



その後もひなと俺の身長について話し声が聞こえたが、俺は気付けばその場から離れてしまった。
ひなはこの身長差について悩んでいる。その原因は俺が大きいから。この背のせいで彼女は悩んでいるのだ。


(俺の身長ば気にしてると…。俺のせいでひなが苦しんでるとね…?)



窓ガラスに映った自分。その横を男子生徒が通りすがった。その彼は自分よりも幾分背が低く、それでいてひなよりも高かかった。



理想の身長差は15〜20センチだと雑誌に載っていた。


20110130

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