short | ナノ


午前2時、ユウジの部屋で一通りの行為を終えた。暑い熱い身体を起こせば窓から車と虫の鳴き声が聞こえた。



「冷房ついてるよ?」


「空気入れ換えや」



そう言うとスエットに上半身裸のユウジは徐に机に置いていた煙草を吸い出した。



「煙草いつから吸ってるん?」


「引退してからやし高校卒業ぐらいから」


「ふーん…おいしい?」


「うまいとかやないな。もう習慣になっとるわ」



ユウジの口から白い煙がふわっと出た。行為後の気怠さや月光の加減が相俟って、今の彼はとても色っぽく見える。そう思いながら暫く見てると「そんな見んなや」と言われた。




「ユウジもよく見れば顔整っているよね」


「仮にも彼氏に向かってなんやその発言。俺はいつでも整ってるわ」


「いやそうだけど…。ほら、白石や謙也って見るからにイケメンやん?だから麻痺してまうねん、感覚が」


「お前、それけなしてるてわかってるか?」


「え?褒めてるんやで?」


「…わかってないな」




無駄にイケメンな白石やある意味残念なイケメン謙也を筆頭にテニス部はみんな男前や。あ、元テニス部か。大学でもつるんでるし感覚ないわ、ほんま。




「でもうちはユウジの顔が一番好きやで。カッコイイもん」


「顔だけか?」


「ちょっとってかだいぶ捻くれてる性格も含めて」


「さっきから褒められてんのか貶されてるんかほんまようわからんわ」


「だから褒めてるって」


「へいへいありがとさん」




口の割に顔はほんまどーでもええっていう態度や。まあそういう所も好きやねんけどな。改めて思うけど、煙草を吹かすユウジはやっぱかっこええ。




「写メ撮ってええ?」


「やじゃボケ」


「ケチ」


「じゃあお前も撮らせろよ?今のまんまでな。そやったらええで?」



今のまんまって…裸やんうち。そう思ってユウジを睨んだらめっちゃヤラシイような勝ち誇ったよう馬鹿にしたような笑いされた。




「で、撮るん?」


「…遠慮します我慢します」


「なーんや、つまらんのぉ」




ユウジは煙草を消し窓を閉め、再びベッドに上がってきた。彼からはふわっと煙草の匂いがし、少しだけ不愉快になった。




「臭い、煙草」


「我慢せえ」


「嫌だ。身体にも悪いし辞めようよ、煙草」


「一旦身体を蝕まれたらそれが快感となりまして…、」


「変態」


「なんやねんええやんけ」


「うん、まあいいけど」




腕を引っ張られたと思ったら熱いキスが降ってきた。吐息や唾液からは、やはりあの独特の煙草の味がする。




「やっぱり辞めてよ、煙草」


「そんなに嫌いか?」


「ユウジの香りや味がなくなっちゃうのは悔しいしヤダ」


「…そっか」




口内からは煙草の味が余韻を含んで私の中を蝕んでいった。ユウジに抱きしめられて、煙草とユウジの香りが私を包んだ。





煙草と残り香




20100722


煙草吸ってるユウジを書きたかった。