short | ナノ


 出来るならばこの先も一緒にいたかった。だけどそう出来ないと分かった今、ただ何とも言えない不純物がしこりとなって身体を蝕んでいく。



 思い返せばいつも一方通行な恋だった。彼女の…ひなからの愛をちゃんと汲み取って、尚且つ俺もその分かそれ以上の愛を捧げていた。そう、そのつもりだった。だけど現実は一方通行。各々の思いが混ざり合うこうは、なかった。


 俺の勘違いだった。俺は自分なりに愛していた。だけどひなはその行為に満足出来なかった。そして彼女の気持ちを読み取ることが出来ず、いつも俺はイライラしていた。『こんなにも愛してるのになんで不安な顔してんねん…』一緒にいればいる程イライラは増す一方だった。


 今となれば俺もひなの愛に満足出来てなかったんだと思う。優しく接するはずが手荒になる、問い詰めるような愛し方…彼女の愛が足りない、それ故の行動。彼女は甘えることもなく、弱音を吐くこともなかった。恥ずかしがり屋な彼女だから…と最初は思っていた。


 だけどいつまで経っても変化のない彼女に不満が溜まっていった。美しい姿も可愛らしい姿、そして汚い姿でも、ひなだったら受け入れられるのに。何故彼女は見せない?そんなにも俺に信頼がないのか?


 我慢出来なかった。日に日に醜い感情が俺を支配する。それを振り払うかのようにいつの間にか俺は、ひなを責めてしまった。どんな姿でも愛せる自信があったのに、いつまでも変わらない彼女の態度までを愛することが出来なかった。


 話し合えばよかったのか?お互いのわだかまりをぶつけ合ったら解決出来たのか?……その選択肢を選ばなかった俺とひな。結局は俺も自分をさらけ出すことが出来なかった。なんて情けない、弱い男だろう。




 一方通行の恋だった。
線は混ざり合うことがなく、常に平行線だった。相手に届かない行き場のない矛先が、別れという結末に辿り着いてしまった。愛する方法が二人とも異なっていたんだ。愛という答えとは同じなのに、それを解く手段が違っていた。その過程があまりにも異なっていたから、不安になった。


 愛は確実にあったのに、愛が見えなかった。ひなに俺の愛を受け取ってもらえなかったことよりも、ひなの愛が受け取れなかった自分が、ただただ憎い。好きだった、愛していた…、と過去形になった……過去形にしている自分が、ただただ哀しい。





何がいけなかったのか?その答えがわからない。亡霊のようにキミだけを思い続ける。



20101217