short | ナノ


ふわふわとする意識の狭間、だるい身体を持ち上げればふわりと白い空気が暗闇に立ち込めていた。ベッドに腰をかけている蔵から「目覚めたか?」と優しい声が聞こえた。



「ん…、今何時?」

「午前3時やで」

「もしかして結構寝てた?」

「いや、そんなことあらへんよ。しんどいんやろ?もう少し寝とき」


ふわりと上へ昇っていく白い空気…もとい煙。健康オタクなはずの蔵が煙草を吸うなんて思いもしなかった。独特の香を放つそれに依存している蔵。そんな姿にもだいぶ免疫がついてきた。



「蔵って意外と図太いよね」

「なんやそれ」

「繊細に見えて意外と野性と云うか…大雑把」


そう話すと眉を少し下げながら困ったように小さく笑う蔵(ああ、その笑い方好きだなあ)。


何でもまめで良好誠実青年…という印象を与える彼だけど、実際はそんなことない。お酒だって飲むし煙草だって吸う。体調管理は徹底されているけど食材管理は下手。同じ材料を何個も買って結局破棄してしまうなんてしょっちゅう。服だって出したら出しっぱなしだし脱いだら脱ぎっぱなし。録画した番組だって消化されず、日に日に増えていく一方。


「なんかだらしない人みたいやん俺」

「いや…可愛らしい人っていう意味だよ」

「なんや納得いかんけど、まあええわ」



灰皿に煙を押し付けて布団に潜り込んできた。ピタッとひっつく私と蔵。行為後ということで肌と肌がダイレクトにぶつかる。少しひんやりとした蔵の身体はちょっぴり気持ちいい。やわりとお腹や胸を触ってくる蔵にこそばゆさと気持ち良さを感じる。



「ひなはやわっこいなあ…ふにふにして気持ちええ」

「んっ…、こそばいよ」

「弾力あるしほんまもち肌やわ…ここもすべすべで気持ちええ…溶けそう」

「ちょっ、……蔵ぁ!」


おしりをやんわりと弄っている蔵に思わず身を捩る。感触を楽しむかのように上下左右動かすその指先に脈が上がる。円を描くかのように撫でる蔵の手に思わず感じてしまう。



「気持ちええ尻やなあ…綺麗やし思わず叩いてしまいそうになるわ」


耳元で囁かれる蔵の甘い声。キュンとする私の身体。ちらっと蔵の顔を伺うと意地悪な顔、そして艶っぽい微笑を浮かべていた。



「ひな…、ええか?」



再び耳元で囁かれる甘い声。お返しとばかりに逞しい胸板に顔を埋めギュッと抱き着く。頬に手を添えられると上へ向かされると甘く熱いキスが降り注ぐ。蔵の唇からは先程の煙草の味がほんのりとした。





唇のソレ
(甘さと苦さと深い味わい)


20101018