short | ナノ


※閲覧注意
(不健全な表現があります。エロではございません)














きっかけは単純だった。読んでいた雑誌か漫画だったか忘れたけれど…その行為があることを知ったのは。


『こんなことをして何の意味があるんだろう』


そう思いながら私はそのこと忘れていた。



しかし、歳を重ねるにつれ様々な経験をする。私もその一人で、楽しい思いもすれば苦しい思いもする。悩んでも悩んでもその糸口は掴めなくて日に日に自分が自分じゃなくなる気がした。誰かがいる前じゃ大丈夫なのに、一人になるとどうしようもなく苦痛になる。


その頃からだ。以前知ったその行為をするようになったのは。先入観かもしれないけれど、その行為をすると気持ちが落ち着くようになった。そして今日も私は繰り返す…。






(またやっちゃった…)


ゆっくりと…ぽたぽたと…鮮やかな液体が肌をなぞっていく。それは雫となり床をポツリと堕ちていった。こんな醜い行為をしているのに出てくる液体はとても綺麗な真っ赤なモノ。


(ああ…こんな綺麗な液体が私の身体を巡っているのね)


初めの頃は痛さを感じたこの行為も、回数を重ねるにつれ快感みたいになっていく。ひと時だけでも、この滲んでか弱く流れる液体を見ていると心が安らぐ。このあとに私を襲う罪悪感や劣等感も、このひと時の快感には負けてしまう。


いけないとはわかっている。馬鹿げた行為だって…醜い…所詮は間違った自己満足…わかってる。わかってるよ。でも病められない。


イタい痛い…傷じゃなく、心が痛い。いつも思い浮かぶのはユウジの顔。あなたのことを思いながら手首に刃物を当て行う。想えば思うほど私はどんどん汚れていく。



私だけを見てほしい

私だけを感じてほしい

私だけ考えて

私だけを愛して




愛すれば愛するほど理不尽な欲望が芽生えてしまう。少しのズレにも不安を感じる。独占欲が渦を巻いて私を飲み込む。愛されているはずなのにこれ以上を求める自分が醜い。傲慢さに吐き気がする。


だから、今日も私はあなたを想いながら行為を繰り返す。


手首の傷はあなたを愛した数…だからどうか、…。





の残像


20101010