アネモネ | ナノ



気が付けばいつも一人でいた。小学生の頃は教室でいつも絵を描いたり読者をしていた。たまにクラスの子に誘われて遊んでいた程度。中学生なり周りが恋だ愛だの話す歳になっても一人だった。誰々と誰々が付き合ったなど花を咲かして楽しそうに話す姿を見ても特に寂しいとも思わなかった。


今の私はどうだろう…相変わらず何も変わっていない自分にため息が出る。いつの間にか『川瀬さんは変わり者』っていうレッテルを貼られていた。『一人が好きなんかなあ…と思ってあんまし喋りかけられへんのよ』とクラスメイトに言われた言葉。確かに一人は気が楽だ。でも、もしも気兼ねなく話せる相手がいたら…と思ってしまう。



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「川瀬さんって財前君と付き合ってるん?」


朝、教室に着いたらクラスメイトに囲まれた。あまりの多さというか、その目線だとか単刀直入な言葉に威圧され一瞬ビックリする。


「いや、付き合ってないよ」

「え…でも昨日財前君が来たよなあ?」

「ああ…、なんやろ音楽仲間っていうか…とりあえず恋だのそんな関係じゃないよ」

「そうなん?!そっか…そうやね!ありがとう!」



そう話すと安心した顔立ちで一斉に離れて行った。なんやねん…と思いながら席に着くと先程言われた言葉を思い返す。

『そっか…そうやね!』

あんたが財前君と付き合う訳無いよな!という意味だろうか。そりゃそうやん。相手はあのテニス部の天才って言われてる人やし(まあ生意気っちゅーのんでも有名だけど)。


ひょんなことから音楽仲間(仲間って言える間柄かも微妙だが、)になった財前君。彼と出会ってから何か日常が変わったとか何もないが、それでも少しだけ学校に来るのが楽しみになっている事実。廊下や下駄箱で彼の姿を見れただけで何故か嬉しくなる。



「これって恋…なんかな」



窓から外を見ながらそう小さく呟く。今まで親しい友達っていうのがいなかったから、もしかしたらこの気持ちは友達に抱くものかもしれない。共通の話題で盛り上がってたわいないことを話す相手。これが友達ならば、たぶん財前君は友達。私に気兼ねく話せる友達がいたのならば、この気持ちに名称を与えることが出来るのかな。





見えない境界線
(この気持ちをどうか教えて)



20101019

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