今日の部活は休み。遊びに行くで!っていう先輩の強引な誘いに俺は渋々頷いた。授業が終わり校門前で待ち合わせをする。「財前君ー!バイバイ!」と手を振ってくる名前も知らん女を軽く無視する。こんな感じで見ず知らずの奴に名前を呼ばれることは日常茶飯事。無視するってたぶん分かってんのに声かけてくる女の気持ちはほんまわからん。 (あー、うざいわほんま) そんな感じで立っていると後ろから「光ー!」っていう声が聞こえた。振り返ると謙也君と部長がおって、金髪が太陽に反射してめっちゃ光っていた。 「先輩ら遅いっすわ」 「すまんなぁ。なんや謙也がなかなかトイレから帰って来うへんたから…なあ謙也?」 「アホか!最速で済ませてきたっちゅーねん!」 「…先輩、手洗いました?」 「洗ってるわアホ!」 そんなくだらんやり取りをしながら歩き出す。すると謙也君と部長がおるから余計に女が喋りかけてくる。俺は普段通り無視するけど人がええ先輩らはそつなく言葉を返してはる。本人らも以上に喋りかけはるのに嫌なはずやけどそんな態度は出さらへん。そんな様子をぼんやりと見ながら歩いていた。 「光てほんま愛想ないな」 カラオケとゲーセン行った後(てか謙也君に振り回された後)、ファミレスでだらだらしてたら謙也君がそう言った。 「愛想ないっていうか興味ないもんにはほんま興味ないな」 「まあ自分でも愛想はない方やと思いますけど別にええですやん」 「てか謙也も今更やな」 「まあそやけど…。てかお前好きな人とかおるんか?」 「ハァ?」 突然なにを言い出すんやこの人は。部長もなに興味津々な顔してんねん。「どうなん?」といかにも楽しそうに聞いてくる謙也君にため息をつく。 「そんな人おらん」 「そうなん?てか女に興味あるんか?」 「謙也君は俺をなんやと思ってるんすか?」 「そりゃ男やし思春期で盛りのお年頃やねからあるに決まってるやろ、なあ光?」 「…なんか語弊あるけどそんな感じっすわ。てかなんでそんなこと聞くんすか?」 「先輩やねんし後輩のことは知っとかんとなあ!」 「意味わからんわ」 俺やって女は好きか嫌いかで聞かれると好きに決まってる。一氏先輩やあらへんし。でも女っていろいろ面倒や。正直疲れる…。 「じゃあ、気になる人とかはおらんの?」 そう肘をつきながら俺の目を見て話す部長。何かを見透かすような目に思わず身震いする。 (気になる、人…、) 「…別におらんっすわ」 ふいに川瀬さんの顔が浮かんだ…が、俺は無理矢理吹き飛ばした。ちょっと音楽の趣味が合っただけ。ちょっと他の女より落ち着きがあるだけ。ちょっと…、ほんの少し他の女より… ―…気になるだけ。 さざ波の如く、 (消えては打ち寄せる) 20100925 [*前] | [次#] |