白石と謙也はいっつも一緒にいる。クラスも同じやし部活も同じ。帰るのも遊ぶのいっつもあの二人は一緒。私は謙也と幼なじみでずっと仲良くしてる。昔から私の横には謙也がおったのに……今じゃ謙也の横には白石ときた。私も同じクラスやからこの3人でよく一緒にいるけど。なんだかなあ……なんだかなあ〜。 「なんや嫉妬してるんか?」 「……は?」 「ひなは謙也取られそうで俺に嫉妬してるんやろ?」 「え、そうなんか?」 「アホ。そんなんちゃうよ」 放課後、部活が休みらしいので喫茶店へとやって来た。ふと前から感じていた違和感を話すと嫉妬?取られそう?いやいやいやいや、そんな馬鹿な。 「いやー、ひなが俺のこと好きやなんて気付かんかったわ。スマンな!」 「好きやけど嫌いやアホ」 「ほな何なん?」 「それが分からんからこうやって喋ってんねん」 「え、嫌いって言われた」 「……ひなはなんか心当たりないん?」 「ん〜分からんなあ…」 「ちょ、お二人さん無視らんとってえや」 「謙也うるさい」 ストローをくるくると弄りながら心当たりを考える。何時からかこの二人を見るともやもやとよく分からない感情が渦巻く。謙也は昔からの友達でいつまで経っても変わらないその人柄や雰囲気が好きやなあ……ちょっとアホっぽいとこも好き。白石は皆から王子やらアイドル的存在やけど中身は結構痛いよなあ。基本優しいけど本性はドSやし……皆騙されてる。 「あ。そういうと最初白石のこと嫌いやったねん」 「いきなり激白やな」 「へぇー……て、ちょい傷付くやん。え、なんで?」 「なんか胡散臭いし。その誰にでも優しいし何でも出来る完璧さがイラッときてた」 「……ほう。今は?」 「ん?もちろん好きやで。本性はドSでただの変人って分かってから物凄い共感を得ました」 「そこに共感なん?!」 「嬉しいような複雑な心境やわ。まあ否定出来んけど」 あーだこーだ喋ってると刻々と時間が過ぎる。いつの間にか外は暗くなってきて時計は18時を指していた。 「もう暗いなあ……そろそろ帰ろうか」 「そやなあ」 「え?まだ18時やで?」 「そうやけどもう暗いしひなは帰らなアカンで。女の子やねんから」 「白石みたいな変人に襲われたらアカンしなあ!」 「俺はそこまでせえへんわ」 「ん〜…まだいいやん」 「アカン。家まで送るし帰ろ?」 渋々お店を出て家へと向かう。謙也とは家が近くて白石ともまあまあ近い。白石と謙也の間を歩いていると、ふとあることに気付いた。 「あ……分かったかも。もやもや違和感」 「ほんまに?何なん一体?」 「多分、やっぱり私嫉妬してんねん」 「おま…、やっぱ俺のこと」 「ちゃうちゃう、謙也単品やなくて二人に」 「俺らに?」 「うん。さっきやってひなは女の子やから〜って話したやん?どっかで私は二人とは違うんやあ……って線引かれてるみたいに感じるねん。きっと多分恐らく」 謙也と白石は男性で、私は女性。この性別の違いに私はきっと蟠りを感じてるのだ。きっと多分恐らく。そう話すと「性別なんかしゃーないやん。てかさほど重要ちゃうやろ?」と謙也が言った。 「だって私は謙也とも白石とも一緒にお風呂入ったり猥談やってせえへんやん」 「ハ?ひなは俺らと風呂入って猥談したいんか?」 「俺はひなと入っても全然大丈夫やで」 「白石と入りたないし。要するにプライベートな部分までわかり合えへんねん。私やって今日二日目でお腹痛いし量多いしマジしんどい死ぬー…みたいなこと喋れへんし言いたくないもん」 「俺もそんなん聞きたないなあ。出来れば」 「やろ?それが恋人同士やったらいいけど私達は友達やん。同姓の友達やったら話せるけどいくら仲良くっても異性の謙也と白石には話せへん。それが引っ掛かってるねん」 親友と呼べるほど仲ええのにプライベートな部分まで話せない。女の子だから特別扱いされてる気がする。どれもこれもしゃーないことなのに私は何故か許せない。だからかな、同姓の謙也と白石が物凄く羨ましく見える。これが嫉妬みたいになってるんだ。 「ん〜…何て言うか、そこまで俺達んこと好きやねんな」 「……は?!」 「ほんまに!なんやねんちょっと嬉しいやん!」 「いやいや、私が言いたいのはそういうことやなくて、」 「もうええよひな。俺達もお前のこと好きやっちゅー話や!なんやねんこんにゃろー!かわええなあ!」 「ほなとりあえず今度一緒に風呂入ろうか?話はそれからや、ひなちゃん」 「ウザっ、白石ウザい!てかちゃうんやって、もっとこうさあ〜〜〜っ、もうええよ!やっぱ二人とはわかり合えんでええわ!」 私の話を聞かんと何やら盛り上がってる二人を睨むとおもっきし笑われた。アカン、やっぱり男と女は根本的に違うんやな。こんなアホに嫉妬した私が馬鹿でした。 もやもや・嫉妬・乙女心 (これも一種の美学かな。) 20110227 Thanks:小西さん! 忍足・白石に嫉妬(友情) |