5万打企画 | ナノ


夕陽が差し込む教室で一人読者をする。普段は賑やかな教室も今は静かで外からは部活の声が聞こえる。オレンジ色に染まったこの空間はなんとなく好き。時計を見るともうそろそろ部活が終わる時間で、読みかけの本を鞄に仕舞って席を立つ。するとガラッと扉が開く音がした。



「お待たせ」
「あれ?早くない?」
「オサムちゃんが用事あるやらで早めに終わった」
「そっかあ。お疲れ様」
「うん」



肩からテニスバックをかけて扉にもたれ掛かりながら光が立っていた。慌てて光のところまで行くとポンと頭を撫でられた。


光とは同じクラスの忍足君と白石君を通じて知り合った。もともと私は光を知っていたけど(テニス部のレギュラーだし。)まさかその光と付き合うことになるなんて夢にも思っていなかった。こうやって今彼の隣を歩いてることも不思議だなあ…なんて思ってしまう。


たわいない話をしながら道を歩く。交通量が多いこの道はよく間近を車が通る。こんな道では必ず光は車側を歩いてくれる。デートの時は何か買い物をすると必ずその袋を持ってくれる。そういうさりげない優しさの一面が意外だったりする。忍足君や白石君は女の子の扱いが上手だしよく学校でも手伝ってる風景を見るから(プリントやノートを運んでる女の子とか。)自然だけど……この無愛想な光がなあ……なんだか、ね。そんなことを思って彼を見てると「なに?」とこれまた無愛想な声で呟いた。



「なんか言いた気な顔してますよ」
「光って優しいね」
「は?」
「こうやって車側歩いてくれるし…荷物あったら持ってくれるし…なんだか意外」
「ああ…。なんか間違ってますよ。別にひなさんの為にやってるんちゃうし」
「…?」
「アンタが怪我したり苦しんだりすると俺が傷付くし困んねん。だから別に優しくしてるわけやありません。俺の為っすわ」



私を見ながらそう言うと前を向きながら歩く彼。何て言うか…光っぽい返答で思わず笑ってしまう。そんな私を見て光は「なん笑ってんねん。置いていきますよ?」とムスッとした顔で呟いた。一歩前を歩く光は私の手を引っ張ってギュッと手を繋いだ。その動作にびっくりすると「歩く遅いしぼんやりしてるし事故んで自分」と光は呆れ口調で話した。



「ふふ…光ってツンデレ?」
「ツンもデレもしてませんわ。てか早う行きますよ」
「はーい」
「どっちが年上だか」
「私だよ?」
「ひなさんは子供っぽいわ。もうちょい成長しましょう、いろいろと」
「うーん……がんばる」
「はいはい」



相変わらず繋がれた手はそのままで、私は光の手をギュッと握りしめる。目線を斜め下に向けながらほのかに微笑む光はやっぱり優しいなあ…。




Raspberry
(ツンとデレあんゆい調和)


20110226


Thanks:カポさん
(ツンデレな光)