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2011/11/02 16:02


心の中で、なんでこんなこと話してるんだろ…と思いながらも一向に話は止まらない。最後に会ったのは何時だとか、懐かしいね、今何してるの?だとか、そんな思い出話をする手間もいらないぐらい私は鮮明に覚えている。



「結局のところ私はあの時まだ好きだったんだよ。でもさあ、ユウジの性格を考えると嗚呼そうだな、別れるしかないな、って思っちゃったんだよね。でさあ、それってつまり私自身も救いたかったってか守りたかったんだよ」

「ふーん。まああんたららしい結末っすね」

「ユウジが東京の大学受けてることも知らなかったし、地元から離れるなんて毛頭もなかったし。私はこのままずっと一緒にいていずれは結婚でもするのかな〜って、呑気なこと考えてたの」

「……ほんで?」

「結果、こんなカタチになったけどね。……私、あの時ユウジになんて言ったと思う?『残酷だね』……今でも時々思い耽るよ。それ言ったら、暫くしてユウジが綺麗に笑うんだ。冷たくて、綺麗で、苦しい顔。あんな笑い方をする彼が好きだったなあ…。なんて、可哀相な人だろう。不器用だな…こんな世界じゃ生き辛いと思う」

「……」

「だれか、ユウジの側にいるのかな?ユウジと寄り添える人いるのかな?……ひとりぼっちじゃなかったら、私はもうそれだけでいいよ」



傍らにある煙草とお酒に手を伸ばす。こんな風に欲しいものが何時でも何処でも手に入ればいいのに。



「俺、ユウジさんのことあんま好きやなかったんです」

「うん。なんとなく知ってたよ」

「そんで先輩のことは好きでした」

「……うん。なんとなく知ってたよ」



嘘。いま初めて知ったよ。



「時折駅で見かけてたんですわ、先輩のこと。高校も違うかったし今更声かけんのも気が引けた。でも今気付いたんっすわ」

「…なにを?」

「ユウジさんと一緒におる先輩が、好きやったんやな…って」

「……」

「ダサいっしょ?気付いた時思わず笑ってしまいましたわ。あー俺ダサ…って。まあこうやって大学でまた先輩と同じになったことやし、いろいろとよろしく」



知ってる?
今ユウジさん帰って来てるらしいですよ。



そう言いながら携帯を見せる財前。ああ、あんたも残酷だよ。


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