小説 | ナノ



テルマの酒場のマスコットのルイーズは可愛い。
仲の良い私は肉球をぷにぷにと触って遊ぶことを許されている。(彼女に認められない人は触れることすら許されない高嶺の花なのだ)



「ルイーズには癒されるわ〜。」



すると彼女は私の問に「そうでしょ?」と言わんばかりにひと鳴き。
やばい、可愛いです。

真っ白いふわふわでもさもさの毛も堪能する。



「あれ?今日はなまえちゃんもいるんだ?」

「はい、お手伝いに来てるんですよ。」



よくレジスタンズのみんなが集まっている酒場の奥で休憩をしていたら、素敵ファッションで天空都市ヲタクのシャッドさんが現れた。
ちょうどお昼時、という事もあってか、他の皆は出払っている。

ちなみに私はレジスタンズについてやこの酒場にお城への秘密の抜け道がある、なんてことはまったく知らないただのお手伝いさんの設定なのだ。
あとシャッドさんの天空人についての話はとてもうざかった…です。
トワプリをやったこのある私にとってその程度の情報なんてことないんだぜ…(どやっ)、とか言うわけにはいかないし。



「あ、また天空人についての話聞く!?」

「それは内容に進展があったら聞く、って前にも言ったじゃないですかー。」



今ではこんな風に軽く流せるようになった。
慣れって怖いわ〜。



「なまえ、お使い頼まれてくれるかい?」

「いいですよ!」



ルイーズを床に降ろして、座っていた椅子から立ち上がる。



「では、ちょっと失礼しますね。」

「うん。話が進展したら絶対に聞いてね!」

「もちろんですよ。」



進展したら聞く、というこの言葉は嘘ではないが、全てが本音ではない。

だって天空都市関係の話が進展する=勇者の活躍を聞けるってことだよね!?
まったく天空人に興味がないってわけではないから、その話も聞けて勇者の活躍も聞けるとか、まさに一石二鳥!!

なんて私が考えているのは内緒である。



「これがお使いのメモだよ。」

「はい、行ってきますね!」



テルマさんからメモと少しのルピーを受け取って私は外に繰り出した。










今の時間帯が昼ということもあってか、城下町に人通りが多い。
通行人にぶつからないようにしながら、もう一度買い物メモに目を通して買い忘れがないかチェックする。

リンゴも買ったし、お肉も買ったし、パンも買った。
……よし、大丈夫!

そのまま酒場に戻ろうかと思ったけど、方向転換して城下町の中央広場へ行く。
その理由はマロマートが出来上がってるのか、個人的に気になるから。

朝、工事?みたいなことしてたから気になるんだよね!!





………セレブショップの跡地をみて、私はしばし言葉を失う。

お店にマロのポスターがべたべたと貼ってあるから、たぶんもうマロマート城下町店なんだろうな。
仕事早ッ。

確かこれは東通りの温泉水イベントをクリアしてからだと、まさかの200ルピーでマロマートに変身しちゃうんだよなぁ。
なんで1ケタ違っちゃうのか、その辺はわからないけどさ。


色々と考えながら、新装開店をもっとよく見ようと近づこうとしたら、扉から緑のイケメン勇者が出てきた。なんかデジャブ!!
私は反射的に買い物袋を抱きしめて西通りへ猛然と駆けていく。



そして現在の家の前に来て、またやってしまった、と項垂れるのだ。

とりあえず酒場に荷物を届けないと、と思い、西通りの細い路地へとぼとぼと入っていく。


その路地が南通りと交叉する場所で、酒場の方の路地へと消えていく全身緑の背中を見つけた。

これはチャンス!
「テルマさん、頼まれてたもの買ってきましたよ」と自然に入っていくことができるはず!!


だけど私の体は硬直したように動いてくれなくて。
ぎゅっ、と無意識に手に力が入る。

大丈夫、大丈夫、勇者様は誰であっても絶対に嫌な顔なんてしない、ってわかっているのに、チキンな私には勇気が足りなくて。
嫌われたらどうしよう、なんてネガティブな考えが先行してしまう。
お人好し勇者に限ってそんなことないのに。
わかってるつもりなのに、最初の一歩がどうしても踏み出せない。

そうだ!きっと歩いて行こうと思うから行けないんだ!!
走ればきっと勢いでなんとかなる!!

そう考えて私は走り出す。



気づいたら東通りの路地にあるジョバンニさんの庭で猫ちゃん達に癒されていた。
完全に走りすぎてしまいました。

今回もまたやっちゃったか……。

はぁ、猫ちゃん可愛いなぁ。
この子達の肉球を充分に堪能してから酒場に戻るともちろん勇者はいなくて。
ついでにシャッドさんが消えていて、モイさんが戻ってきていた。

テルマさんには「遅かったじゃないか」と少し心配されたが、話が弾んでしまって、と苦笑しながらごまかしておいた。







(貴方に会えない。まさか・・・、これが恋!?)






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