小説 | ナノ



私がお世話になっている住居は城下町の西通りにある。
トワプリをプレイしたことのある人ならおそらく何度も通うことになる、愛の宣教師(?)様がいたり、スタアゲームのある例の通りだ。

そこの平原との入り口付近にある動物のための小屋のようなものがある。
ゲームではトアル山羊が何匹かいる所、そこのすぐ横の民家が現在の私の住所である。

すぐ横にあるということは、この動物小屋は家の家主のおばあちゃんのものであって。
昔は大々的に宣伝をして商売をしていたらしいが、今では顔見知りの人に貸したり、どこからかやって来たトアル山羊を保護するのに使っている。

ちなみに思うのだが、たぶんこのトアル山羊たちはトアル村から脱走してきた子達だと思うんだよね…。
まったく、ファドさんにはきちんと仕事して欲しいよ。(会ったことなんてないんだけど)

あ、テルマさんが馬車に使ったであろう馬とかもここにいる。
奥にも入れる場所があったりで、見た目よりもけっこう広いんだよね、ここ。

朝に簡単な掃除をして、動物たちの体を洗ってあげるのも私の仕事である。

や、別にトアル山羊をなでなでポンポン、してリンクのマネ!なんてしてないからね!!………たぶん。



「私の愛馬を預かってくれないか?」

「アッシュさん!」



柵の外にはなにやら重装備をしたアッシュさんとその愛馬である真っ黒い馬がいた。
彼女は少しだけ疲れている顔をしている。



「馬はもちろん了解しました。あと、」

「ん?なんだ?」

「お帰りなさい!」



スノーピークからの帰りだってことはわかってるんだぞ!、なんてそんな軽い口はチキンである私には恐れ多くてたたけないが、お帰りくらいは大丈夫だろう。
アッシュさんは一瞬何を言われたのかわからないような顔をしたが、すぐにいつもの顔に戻って短くあぁ、とだけ返して馬を置いてさっさと何処かへ行ってしまった。

まったく、ツンデレなんだから!!











「よう、なまえ。」

「あれ?モイさんじゃないですか。」



アッシュさんの愛馬のナビィ(勝手に名前付けた)の体を洗い終わって、朝の仕事は終えた!と思ったら今度は重装備のモイさんが来た。
まぁ、来るだろうと少し予測はしてたんですけどね。



「テルマさんの馬を一頭、貸してくれないか?もちろん、許可はとってある。」

「わかりました。どちらにします?」



テルマさんの馬は2頭いる。見分けが難しいが、体全体の茶色が少し薄いのがチャット、少し濃いのがトレイル(この2匹も勝手に呼んでいるだけ)だ。



「今日のコンディションが良い方するよ。」

「んー…、だとするとこっちの子ですかね。」



チャットを撫でる。
奥に置いてある手綱なんかの装備一式をモイさんと一緒に取り付けてあげれば、旅の準備のできあがり。



「気をつけて行ってらっしゃいです。」

「ありがとう、行ってくるよ。」



出発したモイさんを見送って、おばあちゃんにこのことを報告すれば今度こそ私の朝の仕事は終わりである。



いやー、私もだいぶ動物たちの扱いが慣れてきたもんだよ!
最初はトアル山羊でさえ怖々だったのに、今では馬の世話もにわかではあるが、できるようになってきた。
すごいな、自分!!

おもいっきり伸びをしながらそんなことを考える。
今はまだ朝早いので通りに人は少なく、いるのは猫くらいだった。
狼リンクがこの状態できてもあまり騒ぎにならないレベルじゃないかな。
昼間に行くと人が叫びすぎ&逃げすぎで色々とびっくりしたもんなぁ……。



タタッ、



「!」



人間ではあり得ない軽い足取りの音を耳が拾った。
反射的に私はトアル山羊の後ろに隠れる。
体は完全に隠れてはいないかもしれないが、パッと見はわからないはずだ。

息を殺して様子を伺う。
山羊越しに見えたのは私が思い描いてた通りの聖獣。



「なんだ?人間にもどるのか?」



その狼の足下の影から小さな人型のようなものが飛び出してきた。
ミドナだ。
ちゃんとした姿(と言っていいのかよくわからないが)を見るのは初めてである。

傷ついたミドナをリンクがお城に連れていく時、私はチャットとトレイルの世話に忙しかった。
それに勇者も急いでいたから、姿を見れたと言っても本当にちょこっと。
狼の背の色がなんかちょっと変だったよね、程度なのである。

だからちょっと感動してる!!
声を聞くのは2度目なんだけどさ。


ミドナの問に狼が頷いたため、体が黒に包まれる。

次にその黒(断じて海苔ではない)が晴れたとき、そこにいたのはイケメン勇者様だった。

なんだか彼の周りがキラキラと光っているように見える。これは朝焼けですか?本当にそうなんですか?



「これからテルマの酒場に行こうかと思ってるんだけど、ミドナはどう思う?」

「いいんじゃないのか?酒場には情報が集まるっていうしな、ククッ。」

「んー、ちょっと朝早いけどやってるかな?」

「行ってみればわかるだろうよ。」



確かに、と頷いた勇者はテルマの酒場へ向かうために通りを駆けていった。

反射的にまた隠れてしまい機会を逃してしまった、と残念に思う反面、朝から生勇者と生ミドナが見れてとても私は幸せです…っ!!!







(ついでに隠れてたから変身シーンまで見れちゃったし!)





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