小説 | ナノ



ポツリ、ポツリと雨が降ってきた。

上空を仰ぎ見れば黒い雲があたりを覆っていたが、その先には青空も見えていて。
普通の通り雨のようだ。これは雨雲が過ぎ去るのを待った方がいい。
本降りになる前にどこか見つけて雨宿りでもするかな。
濡れたままになってしまうと体温を奪われてしまうし、何より私が雨の中動くのはあまり好きじゃない。

ちょうど前方に大きな木が見えた。ナイスタイミング。



「ねぇ、リンク。雨宿りしてかない?」

「あまやどり?」

「そっ。あそこがちょうどいいと思うんだ。」



そう言って先程見つけたあの木を指す。



「通り雨みたいだしすぐ止むと思うんだけど濡れるの嫌だから少しだけ、ね!」



さっさと木陰に逃げ込む。
リンクも少しばかり遅れを取りながらやってきた。

さて、ちょっと時間ができるから軽く剣の手入れでもしてようか。
木陰に座り込み剣を抜く。刀身はちらちらと雨を映して鈍く輝いていた。

……あれ?



「座らないの?」



そのちらちらと輝く光の中に立ちっぱなしの緑が見えた。
休憩すればいいのに。

彼は私の呼び掛けに答えずじっ、と雨の世界を観察している。
無視ですかーい。ま、別にいいけど。

目線を剣に戻し、手入れを開始



「なぁ、これって水なのか…?」

「ん?」



しようと思ったが、リンクの変な質問により中断された。
なんだ水って?雨のこと?

質問の意図がわからず私が答えあぐねていると、彼は木陰から一歩外に出た。



「ちょっ、」



大地に平等に降り注ぐ雨がリンクを避けていくなんてことはあるはずもなく、水分を含んで彼の特徴的な緑の衣がさらに濃くなった。

えっ、なに。
実は濡れるのが好きだった、とか?



「マスター、確かに水ですがこの水滴の名前を雨といいます。」

「あめ…、」



リンクの剣から不思議な音と共に全体的に青い妖精が現れた。



「はい。上空の水蒸気が冷えて水滴となり、地上に落ちてくる現象です。」

「…へぇ、」



その妖精の言葉は当たり前のことだったけど、そういえば緑の彼は天上遥か彼方から来たことを思い出す。

………もしかして雨が珍しかった…?


リンクは相変わらず雨の世界に佇んでいる。



「空が、泣いてるみたいだ、」



私も目線を空に向ける。

雨が降ることなんて当たり前過ぎて彼みたいなことは考えたことが無かった。

…リンクって案外ロマンチストなのかもしれないや。





∵そういえば空勇者は雨を知らないんだろうな、という妄想の塊。
雨の説明は適当です、すみません。違っていても広い心で流してください。
あと夢主はきっと戦えるタイプの子。たぶん。そしてスカイロフト出身じゃない。





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