小説 | ナノ



「あった…。」



文献に近い色・形状をしていることから、これが例のブツで間違いないだろう。
やっと見つけた。
これさえ見つかればこんな所に用はない。ばれる前にさっさと退散しよう。

見つけたばかりのその濃い色の石の中で一番小さいもの(それでも結構大きい)を選んで手に取る。
表面はひやっ、としていて冷たかった。



「君はそれをどうするつもりなのかな?」



突然聞こえた声に驚き、後方を振り向く。
すると入り口付近には金髪で緑の服を着た人物がいた。
おそらく彼はこのハイラルを救ったとされている噂の勇者サマ。

ちっ、なんで今日に限ってここにいるんだ。
ハイラル兵士の目を掻い潜って宝物庫まで来るのは比較的簡単だったのに……、行きはいよいよ帰りは怖いってやつか。

ちらっ、と周囲に目線を走らせる。
ハイラル城の宝物庫はいくつもあるが今回私が忍び込んだ場所はあいにく地下にある。つまり逃げ場は勇者サマ近くにある入り口だけなんですね。はい、詰みました。
でもでも、私にはどうしてもこれが必要なのだ。

………というわけで強行手段を取らせていただきます。



「御免!」



ポケットから自家製煙幕玉を出し、煙幕を発生させる。

そして彼が驚いた一瞬の隙をつき扉から外に逃げる。
一応持ってきといて良かった。備えあれば憂いなしって本当のことだったんだね。



「ごほっ、待て!」



勇者サマってばしぶとい。
しかし待てと言われて待つ人は居ないんだなぁ。

彼の声を後ろに聞きつつ走っているとキン、と音がした。

何事!?と思って後ろを振り替えるとそこには、弓を構えた勇者サマ。

まさかまさか。
さっきのはこの石に衝撃を与えた音じゃないよ、ね……………?



「うわっ!?」



ぶわっ、と石を中心に光が広がり一瞬にして景色が変わる。
古びた石畳は新品同様に、壁もまた同じ変化を遂げていた。
やはりこれは私の目当てのもので間違いなかった。

勇者サマは突然の変化についていけず、ポカーンとしている。
そりゃあ、誰だっていきなり周囲の空間が転位したら驚くよね。


さて、これからどうしようか。





∵ここまで書いて力尽きた





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