小説 | ナノ



私が知っている大抵の物語では、お姫様には幸せな人生が待っている。
でもそれがお話の中では決して語られない人達のおかげで成り立っているということを彼女たちは知らない。
そして彼女たちの発言は誰かの命運をねじ曲げる力を持っているのだ。

私もその抗えない力に巻き込まれた一人である。



「なまえって賢者のくせに馬も乗れないのな。」

「いやいや、別に賢者じゃありませんから。」



時オカならまだしも、トワプリのあの仮面野郎達とは同じ扱いをされたくない。


なぜか6賢者の内の現在席が空いている賢者になるために異世界からこの世界に呼ばれてしまった私。
本来ならば賢者という、読んで字のごとく偉い(と思われる)その地位に一番適切なのはゼルダ姫である。
彼女は魔法を使うことが出来るごく少数の人間であるし、ハイラルの姫という選ばれた人種であることに間違いはない。
しかし彼女は賢者になることを拒否した。
「私はハイラルの民が見える範囲でこの国を治めていきたい」、と。

賢者になれば、普通の人たちと同じ世界にはいられない。
それは私が時オカで知ったこと。
ゼルダ姫はそれを嫌がった。
この国を見守ることも大切な役目であるが、彼女はハイラルの民と同じ目線でこの国を治めていくことを選んだのだ。

いくらガノンドロフという脅威が去ったとはいえ、賢者を長い間空白にしておくわけにはいかない。
ならば適正のある人間を呼び寄せればいい。
という感じで私は強制的にトリップさせられてしまった。
ちなみに、自分のどの辺に適正があったのかは未だにまったくわからない。今世紀最大の謎である。

だが、トリップの影響か、賢者になるためのオーラ?のようなものがものすごく足りないようなのだ。
賢者らの話によれば、ハイラルにいるだけでも微量にそれは溜まっていくが、各地の神殿を回るとそれが結構溜まるらしいとか。
なのでこれから、勇者をお供に今から時の神殿に向かうつもり。
別にマスターソードが見たい!とか、そう言うわけではない…、一番行きやすかっただけなんだから!………たぶん。



「ゼルダ姫に黙って出てきてよかったのか?」

「ちゃんと書き置きはしてきたよ?」

「いや、そういうわけじゃなくてだな…、」



ならどういうワケなんだ?

トリップしたての私はお城で衣食住の約束をもらっていた。
理由簡単。ゼルダ姫が負い目を感じているから。

確かに私がこの世界に来てしまった理由はゼルダ姫が作った。
だけど会うたびにあんな申し訳なさそうな顔をされるのはなんだか慣れなくて。
私は別に彼女を憎んでなんかいないのに。

もともと楽天的な思考回路をもつ私。
大好きなゼルダ(しかもトワプリ)の世界に来られてラッキー、くらいにしか思っていない。
オーラ?を貯めたってどうせ私じゃ賢者になんかなれないだろうしね。



「私がいない方がゼルダ姫は美人な気がするのよ。」



責任を感じてか、私のことを一番に考えてくれる彼女。
とても栄光なことなのだけど、顔が笑っていても申し訳ない感じがいっぱいにでていて…。
そんな顔よりも笑っていた方が可愛いのに。
だからちょうど良くお城にいた勇者を捕まえて今からハイラル一周の旅を始めます!!

光の勇者様にはとりあえず大まかな事情は説明してある。
俺で良ければ、と承諾してくれたのは奇跡だと思った。
彼の笑顔はやっぱりイケメンで、それに加えて世界を救った貫禄がある気がするよ!!

というか、この人の方が賢者に適切だと思うんだけど…。
勇者はダメなのかな?



「なまえはさ、俺の冒険のこと、どこまで知ってるんだ?」

「えっ?全部知ってるけど?」



勇者は国の危機に立ち上がるモノであって、最終兵器とか最終防衛ラインのようなものだから残しておかなくてはいけないのか、そうか、そうなのか。
と一人で勇者が賢者にスカウトされない理由を考え納得していたらリンクに話しかけられていたらしく、深く考えずに即答してしまった。
勇者はそうか…、と小さく呟いていた。

その言葉を聞いてから、知らない振りをしていた方が良かったかな…、という感情が生まれる。
なんだか彼が沈んでいるようにみえたから、知られたくないものだったらどうしようとか、そんな風に考えてしまう。



「あとさ、もう1つ聞いていい?」

「なに?」

「俺のこの服のモチーフになったモノを着てた古の勇者について、何か知ってる?」

「もちろん!!」



私は満面の笑みで即答した。

だって、スカイウォードソードの空の勇者についてですよね!?
もちろんプレイしたから知ってるさ!
あー、スカイロフトに行きたい!!!おっと、ここでは天空都市なのか…?
おばあちゃんについては謎のままだったけど。

ついでにその100年後の世界でゼルダ史が分岐する事も知ってるし、その分岐でできたこの世界の並行世界に位置する一面海の世界も知ってる。敗北ルートなんてのも存在してるけどさ。
海の世界は100年後には新しいハイラルを築いていたりすることや、四季を操ったり時空を越えたりしてハイラル以外の地を旅する勇者や、光と闇の世界を行き来して世界を救った勇者の冒険、不思議な世界に囚われて大きな卵を孵す話も知っている。
マスターソードの最後の働きも知っているし、勇者が分裂してしまうフォーソードという剣や、小人の存在であるピッコルという種族が鍛えたピッコルの剣なんてのの存在も地味に知っていたりする。
つまりは、ゼルダシリーズについてゲームをプレイして知ることのできるものなら、やりこんでいるから大体のことは知ってるのだ。
私ってばゲーマーだなぁ。



「古の勇者について気になるの?」

「まぁな。どういう経緯でこの服を着たのかとか、なんでこの色なのか、とかさ。」

「長くなっても良いなら一から話すけど?」

「手短にお願いします。」



即答だったその答えに少し笑いながら、勇者ってのはどの時代でも長い話は好きではないらしい、なんて考えてみたり。



「まず遙か昔、ハイリア人は天空都市に住んでたんだ。」

「えっ!?あんな高いところに!?」

「うん。雲の下にはこんな世界があるなんて知らなかったらしいよ。」

「はー、その発想がないわ。」



うん、私もそう思うけど。(というか厳密には地上→空なんだけどややこしくなりそうなのでそこはカット)
えーと、短くまとめないとな。



「で、そこの騎士学校に通ってた勇者が地上に落ちてしまった幼馴染みを助ける旅にでたってわけ。以上。」

「…えっ、それだけ?」

「うん。まぁ、色々あって彼等が地上にハイラル王国を創り上げていくわけだ。」

「ちょっとかいつまみ過ぎじゃね?そこまでの経緯が一番重要そうに思えたんだけど。あと服については?」

「だって手短にして、って言ったのはリンクじゃない!ちなみに服について話すとまた長くなります。」



えー、話聞くのは面倒だけどこの緑の服については興味あるなー、なんて呟く光の勇者。
例の緑の服は騎士学校の制服だったけど、学年によって色とか違うみたいだし。詳しいことは私もわからないんだけどさ。

あー、今日も空が青いなぁ。




(そんなこんなで旅路は続く)



∵実はサイトを作る前に考えていた最初の長い話はこの設定にするつもりだった、なんていらない情報




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -